ぜんそくの予防に対する鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2012.1.1

鍼灸治療では

ゼーゼー、ヒューヒューと息が苦しくなり、大変つらい思いをされるぜんそくの患者さんは鍼灸院にも来院されることがあります。そこで、鍼灸治療を継続して行っていくことで、ぜんそくが楽になり発作も起こりにくくなって、患者さんがかつてのように楽しい生活を送れるようになります。そこで、今回はぜんそくの患者さんに対する鍼灸治療について考えていこうと思います。

まず、最初によく説明する必要のあることなのですが、「ぜんそくは命にかかわる病気」であるということを知っておいてもらわねばなりません。現在、日本ではぜんそくの患者数は450万人といわれていますが、実際に治療を行っているのは150万人ほどだといわれています。そして、治療を受けずに放置しているために、一年間で約3000人ほどの方が命を落としています。

一般にぜんそくというと「子どもが咳をしている病気」というイメージがあるようです。そのため、あまり危険な病気という認識が薄いのでしょう。しかし、ぜんそくは大人になってからかかることも多い病気です。鍼灸院に来られたぜんそくの患者さんは、しっかりと病院で治療を受けているか確認して、もし受けていなければ病院を紹介し併せて治療を行っていくことになります。

鍼灸でのぜんそくの治療は、主に発作が起こらないようにする予防的な治療がメインになります。特に重度のぜんそくの場合などは、発作時には血圧が200~300を超えて苦しんでもがいているような状態なので鍼や灸を行うのは難しいからです。しっかりと治療を継続していくことで、少しでも体の状態を落ち着かせて発作が起こらないようにしていきます。

発作を予防する

ぜんそくは常に発作があるわけではなく、何らかの誘因によって発作が起こってしまいます。ある調査では、症状の悪化や発作を起こす誘因として、風邪、ほこり、天候、疲労、ストレスが上位を占めており、他にもタバコの煙、睡眠不足、アルコール飲料、花粉、ペットのふけなどが続いています。

鍼灸治療は発作を予防するために、これらの誘因に対してアプローチしていきます。誘因は人それぞれ異なりますので、ぜんそく日記などを使用して、その患者さんの誘因を知り、治療していくことになります。

鍼灸治療と関連のある誘因は、風邪、天候、疲労、ストレス、睡眠不足などが上げられます。それぞれどのように対処するのか考えてみましょう。

風邪

まずは何と言っても風邪を起こさないことが大切になります。風邪がぜんそく発作の誘因になっていると答えた人は68.9%もいるからです。風邪の予防によく使われるのは背中のツボです。

身柱(しんちゅう:第3、4胸椎の間)」「風門(ふうもん:第2胸椎の外2cm)」がよく使われます。身柱と風門で逆三角形になるように取穴します。ここは、灸をするのが効果的です。普段から毎日半米粒大の灸をしておくと風邪の予防になります。特にこの部位がゾクゾクと寒気を感じるようなときは風邪の一歩手前ですので忘れずに行いましょう。

ストレス

次にストレスに対処しておきましょう。患者さんは日常生活のなかでもストレスを感じていますし、ぜんそくという病気そのものがストレスにもなってます。そうすると、ストレスによって体にも反応が現れてきます。よくストレスがあるときに、コチコチに硬くなっているのが、首の筋肉です。あごの後ろから鎖骨のほうについている「胸鎖乳突筋」がそうです。ぜんそくの患者さんはストレスと咳などの症状によって特に反応が現れています。そこで、この胸鎖乳突筋を緩めてやることで、ふぅと息ができ体が楽になり発作の予防にもなります。

この胸鎖乳突筋には「人迎(じんげい:のどぼとけの外1.5cm、動脈の拍動が一番強いところ)」に鍼をするのが効果的です。この人迎の深部には頚動脈洞があります。頚動脈は脳に血液を送っている重要な血管で、この頚動脈洞には自律神経などを調整する働きがあります。そこで、ここに鍼をして刺激を与えることで自律神経の働きを整えてストレスの影響を軽減します。

人迎への鍼は「頚動脈洞刺鍼」を略して「洞刺」と呼ばれることが多いです。この部にスッと鍼を刺して5秒ほど置鍼して抜くと血圧なども下がることがあります。これによって、胸鎖乳突筋も緩めて発作を予防します。

またストレスが特に強くなったときには胸にも反応が現れます。両乳頭(乳首)の中間にある「膻中(だんちゅう」は特に反応が出やすいツボとして有名です。このツボはあまり強く抑えると痛むのでやさしく抑えましょう。日常生活でストレスが強い時には、「皮内鍼」を皮膚に止めておいてもいいでしょう。

睡眠不足

次に睡眠不足を解消しておきましょう。あまり眠れなかったりすると、次の日に発作が起こりやすいことが多いからです。少しでもよく眠れるようにしておくことが、ぜんそくの治療では有効です。

睡眠不足の人には、「失眠(しつみん:かかとの中央)」がよく効きます。ここには灸をしましょう。普通は灸をすると1~2壮くらいで熱さを感じるものなのですが、睡眠不足があると何壮灸をすえても熱さを感じません。そこで、熱さを感じないときは熱さを感じるまで何壮でも灸をすえていきます。数十壮、あるいは数百壮すえていくとかかとから頭のほうにまで熱さが上ってくりょうな感じが出ます。このくらいまで灸をすえるとよく眠れるようになります。

失眠のほかにも「安眠(あんみん:耳の後ろの骨の出っ張り(乳様突起)の後下方)」を使うこともあります。ここは鍼も灸もいいでしょう。鍼をするときはじんわりと気持ちのいい響きが出るように刺入するとよく眠れます。

天候

ぜんそく発作は天候とも関係しています。天候が悪い時には発作が起こりやすいのです。鍼灸で天候を変えることはできませんが、天候による体への影響は軽減できます。

天候は主に気圧の変化が体に影響を与えていると考えられています。気圧が変わったことで自律神経が体の調子を整える必要が出てきます。しかし、このとき自律神経がうまく働かないと体はバランスを崩してしまい、ぜんそく発作が起こりやすくなるのです。

そのため、普段から治療をして自律神経が気圧が変わっても正常に働けるようにしておくことが大切になります。自律神経の働きを調整するツボは「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」がいいでしょう。百会はすべての経絡が通過するところとされており、体全体の調子も良くしてくれます。頭に鍼をするというと「危険はないのかな」と心配される方もいますが、大丈夫です。頭は重要な臓器(脳や血管)を保護するために分厚い骨でガードされていますので、鍼を刺しても問題ありません。

百会への鍼は頭の骨に沿わすように水平に入れていくことがあります。また、百会のほかにも圧痛点を探して鍼を刺し、通電することもあります。頭の鍼は意外と気持ちがよくて、治療中に眠ってしまう人もいるくらいです。

また百会には灸をするのも効果があります。髪の毛などがありますが、灸をしても中断すればすぐに髪が生えてくるので目立ちません。毎日灸を続けていると自律神経の働きが整えられてきます。

疲労

最後に疲労について考えてみましょう。ぜんそく発作は疲労すると起こりやすくなります。ぜんそくがあると咳などで体に疲れがたまり、日常生活でも疲労があるとさらにぜんそく発作が起こりやすくなるという悪循環があるのです。そのため、日常生活ではあまり疲れをためないようにしなければなりません。

疲労を解消する鍼灸治療を行うには、全身に鍼や灸をするのがよいでしょう。腕が疲れたから腕だけを治療したり、足が疲れたから足だけを治療するというよりは、体全体をよく観察し、それに合わせて全身のツボを使い治療すると疲労の回復につながります。また、そうすることで疲れにくい体にもなってきます。

このページではさまざまなツボを紹介してきましたが、これのツボは全身の治療と組み合わせて行っていきます。鍼灸治療はどこか一か所のツボを刺激すれば治るというようなものではなく、体全体の状態を観察して治療することで病気に対応していくというのを知っておいてください。

まとめ

このように鍼灸治療を行い、継続していくことでぜんそく発作を予防し、普通の人と変わらない生活を送れるようにしていきます。

また、ぜんそくの治療では患者さんの病気のとらえ方も大切になります。「何としてもぜんそくを治そう」と頑張っているとなかなかぜんそく発作は落ち着いてくれません。「ぜんそくとうまく付き合って生活していこう」というふうに考えることができるようになると自然とぜんそく発作も落ち着いてきます。最初は難しいでしょうが、上手に気持ちを切り替えてぜんそくに対処していくようにしましょう。



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