尿もれ(尿失禁)と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.12.26

鍼灸治療では

出そうとしていないのに尿が出てしまう「尿もれ(尿失禁)」に対して鍼灸治療を行うこともあります。尿もれがあると生活の質(QOL)が大きく下がってしまいますので、しっかり治療して快適な生活を送れるようにしていく必要があるからです。

鍼灸院は女性の患者さんが多い傾向があり、また、高齢者の人も多いといえます。尿もれは妊娠・出産経験のある女性が起こりやすいのですので、尿もれに困っている方はよく見かけます。通常は尿もれの相談はしにくいものなのですが、鍼灸治療は体全身に鍼や灸を行うため普段から来られている人は相談しやすい面もあるかと思います。

また、尿もれは女性だけでなく男性にも起こりますが、治療内容は男女とも変わりありません。そこで、今回は尿もれに対してどのように対応していくのかを考えてみようと思います。

尿もれのチェック

まずは、尿がどのような状態で、どのくらいもれてしまうのかを問診で詳しく聴いていきます。また、簡易的なチェック法もあるので、それを行ってもらうこともあります。

自分でできるパッドテスト

最初に次のものを用意しましょう。
・尿もれ用、あるいは生理用パッド
・水500ml
・時計
・はかり

道具をそろえたら、次の手順でもれる尿量を測ります。

1.最初にパッドの重さを測る。
2.パッドを着用して水500mlを飲んで、15分間安静にする。その後、30分ほど歩く。
3.歩き終わったら、「階段1階分の上り下り」「1か所を1分間走り続ける」「椅子に座ったり立ったりを10回繰り返す」「できるだけ強く、10回せき込む」「床の上のものを拾う動作を5回する」「1分間水を流しながら手を洗う」という6種類も動作を行う。
4.最後のパッドの重さを測る。

このような動作を行い、パッドの重さを測ることで、どのくらいの尿量がもれているかを調べます。
もれた量が2~5gなら軽症、5~10gが中等度、10~50gが重症、50g異常が最重症とされています。

また、このパッドテスト以外にも、簡単な排尿日誌を1週間分書いてもらうこともあります。尿もれや頻尿の患者さんのなかには、水分をのみすぎているために起こっている例が意外と多く、患者さん本人はのみすぎていることに気づいていないことがあるからです。この場合は、水分を少し控えるようにする必要があります。

尿もれの治療

では、治療について考えていきましょう。尿もれの治療では鍼灸治療と並行して、骨盤底筋体操を行ってもらいます。

骨盤底筋体操とは、イスに座った状態で肛門付近の筋肉(肛門括約筋)をキュッと引き上げる動作を10回ほど行います。これにより、力がなくなった骨盤底を引き締め、支える力を取り戻すことができます。

鍼灸治療ではおなかにある「中極(ちゅうきょく:おへその下5cm)」のツボを使うことが多いです。このツボには膀胱に響くような鍼をしていきます。鍼を刺して膀胱に響く感じがあれば(男性では尿道のほうにひびくこともある)、そのまま鍼を刺して置いておく「置鍼」を行います。比較的軽度の尿もれであれば、この鍼を何度かするだけで尿もれが改善されることもあります。

また、他にも膀胱に影響を与えるツボというのが存在しますので、それらを使用することもあります。

地機(ちき:足の骨(脛骨)の内側、膝から足首の中間)」などは膀胱に影響の強いツボとして有名です。ここへはお灸するのがいいでしょう。尿もれや頻尿があるときは、このツボは灸をすると熱さを感じにくくなっているので、熱さを感じるまで灸していくことになります。これは直に灸をした方がよく効きます。半米粒大のもぐさに点火して、その灸のまわりを竹筒で抑え込む「深谷灸」を行います。

深谷灸は竹筒で抑え込む感覚で痛みの感じ方を軽減することができるため、直でお灸をする場合に便利です。灸は熱さを体の中に熱さが染み渡るような気持ちのいい感じがくれば、より効果が高いといわれています。もし、灸をして嫌な熱さがあれば、ツボを取る位置がずれている可能性があるので、もう一度取り直した方がいいでしょう。

ほかにも足のツボで尿もれや頻尿に効くツボがあります。「照海(しょうかい:内くるぶしの下)」がいいでしょう。ここにも灸をしていきましょう。照海は体全身の水分バランスを整える働きがあり、尿もれや頻尿などのような「水」の関係する疾患にはよく使います。

照海は漢字の中に「海」という字がありますが、これは水の疾患に対応していることを意味します。ツボの名前にはそれぞれ意味が存在し、「さんずい」が付く漢字は水の疾患に対して効果があるといわれています。

また、膀胱は骨盤内に収められていますので、腰のツボも使うことがあります。骨盤の上にあるツボで「次髎(じりょう:骨盤の中央、正中線の外1.5cm)」がいいでしょう。骨盤底が緩くなって尿もれが起こっている場合は、骨盤内の血行が悪くなっていることもあるので、その改善も目指します。鍼を刺してその持ち手にもぐさを付けて燃やす「灸頭鍼」は鍼の効果(膀胱への刺激)と灸の効果(血行改善)を同時に行えますので非常に効果的です。

そのほかの症状を改善する

尿もれがあると、ほかにも症状が現れることがありますが、それも合わせて治療することで尿もれの改善にもつながります。

よくあるのは「便秘」です。便秘があると骨盤底にも負担がかかり、尿もれを悪化させてしまうので治療しなければなりません。便秘の改善には「神門(しんもん:手首のシワの上で、小指側の手の平と甲の境目)」に灸をすると、便通が整うことが期待できます。快便になることで、力まずに便が出るため、負担を減らすことができます。(便秘に対する鍼灸治療も参照してください)

そのほか肥満によっても骨盤底に負担がかかることが知られています。便通の改善のためにもバランスよく食事をし、理論的な運動や、ダイエットの鍼灸治療も組み合わせて行っていくとよいでしょう。

また、過活動膀胱には睡眠時無呼吸症候群が関係しているといわれています。睡眠時無呼吸症候群とは夜寝ていても脳が覚醒している状態があることで、いびきをかいていると思ったら急に呼吸が止まる期間がある病気です。これは肥満が関係していることもわかっているので、そのためにも肥満の治療は必要になります。

さらに、尿もれに関係する症状として「冷え」があります。体が冷えると切迫性尿失禁が起こったり、頻尿になりやすいので、この冷えも解消しなければなりません。冷えの治療は全身の調子を整える必要があるため、「中脘関元曲池・三陰交腎兪」などのツボを使い、継続的に治療を行うようにしましょう。

まとめ

尿もれがあると、外出しにくくなったりと、さまざまな不便が生じます。このようなときは一度相談してください。実際に治療してみると、軽い刺激でもよくなる人もいますので、試してみる価値が十分にあると思います。また、普段から定期的に鍼灸治療を受けていると、再発も防ぐことができるでしょう。



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