鼡径ヘルニアと鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.12.12

鍼灸治療では

今回は鼡径ヘルニアに対しての鍼灸治療がどのように対応するのかを考えてにようかと思います。基本的には鼡径ヘルニアは手術を行うものであり、特に嵌頓ヘルニアなどは命にかかわることもあるので、注意が必要です。このような場合は鍼灸院から病院を紹介し、患者さんに受診してもらうようにしています。

鼡径ヘルニアに治療では、子どもと大人では治りが違うともいわれています。子どもの場合は、鍼灸治療を行うことでよくなることもあるのですが、大人では治らない人もいます。特に高齢になっている場合は難しいといわれています。

ですが、鍼灸治療がまったくの無力であるかというとそうでもありません。鍼灸治療の考え方で「未病治」というものがあります。今回はこの未病治という視点から鼡径ヘルニアへの治療についてみていこうと思います。

鼡径ヘルニアを見つける

まず、鼡径ヘルニアを持つ患者さんを見つけて病院への受診を勧めるための手段について書いておきましょう。

鍼灸治療にはただ単に痛いところに鍼を刺すだけでなく、体全身の状態を把握して、正常な状態から崩れてしまったバランスを取り戻して病気を治そうという考えがあります。そのため、どのような患者さんが来られても、まずは「腹診」と「脈診」を行うようにしています。

これは患者さんの状態を確認するために行っているのですが、腹診は手のひらで直接肌に触れています。その際、患者さんは他の治療院ではいわないような症状までも訴えてくることがよくあります。

鼡径ヘルニアもその1つといえるでしょう。普通は下腹部の症状をいうことに抵抗があっても、腹診をしているときは「そういえば最近、足の付け根に膨らみがあって指で戻してやらないといけないんです」と何気なくおっしゃいます。その場合は、鼡径ヘルニアである可能性も考えてみていきます。

鼡径ヘルニアとは腸が飛び出してきているものです。通常、人間の体はライトで光を当てても遮断してしまうものですが、腸はライトの光を当てても光が通過して見えています。そのため鼡径ヘルニアを疑う場合はペンライトなどを使い、光の通過度合を診てみます。もし、鼡径ヘルニアであり病院にかかっていないのであれば医療機関を紹介することになります。

便秘を解消する

患者さんが鼡径ヘルニアであり、鍼灸治療を行う場合は、まず便秘の改善を目指します。鼡径ヘルニアとは、主に「腹壁の力が弱まる」「腹圧がかかる」という2つの要因によって起こると考えられています。後者の腹圧がかかるというケースは、排便時に力を入れたときなどがそうです。そのため、便がスムーズに出るように便秘の解消が必要になるわけです。

便秘に使うツボは「関元(かんげん:へその下3cm)」がいいでしょう。この関元には鍼も灸もよく効きます。鍼の場合はおなかの中の方にまでやさしく響くような鍼をしていきます。灸を行う場合は、半米粒大の大きさで熱さを感じるまですえていきます。そのほか、「天枢(てんすう:へその外1.5cm)」や「太巨(だいこ:関元穴の外1.5cm)などもよいでしょう。これらのツボに毎日灸をすると便秘が解消されていきます。

お灸の代わりに、腹部にカイロを当てておくのも便秘解消によいでしょう。また、おなかを冷やさないためには夜寝るときに腹巻をしておくことも効果的です。

そして、便秘について知っておかねばならないことがあります。それは便秘の定義です。便秘とは便が出なくて患者さんがつらいと感じれば便秘と診断されます。したがって、毎日便が出ていなくても本人が何とも思っていなければそれは便秘ではありません。

よくテレビなどで「毎朝トイレで便を出すように」などといわれることがあります。これで出る人はいいですが、毎日出ない人が朝必ず排便しようとしてトイレで力んでいると、鼡径ヘルニアが悪化してしまいます。また、これは痔についても同じように考えられています。自然に出そうだという感覚がくるまで待ち、出すときにサッと出せればそれで問題ありません。無理に腹圧がかからないように気を付けましょう。

東洋医学的に治療する

鼡径ヘルニアになる要因にはもう一つ「腹壁の力が弱くなる」ことが上げられます。鍼灸治療ではこれを東洋医学的に治療することがあります。

腹壁は複数の筋肉や筋膜などからできています。この腹壁によって、内臓はおなかの中に納まっていて出てこないようになっています。もしも、筋肉が弱ったり、筋膜の弾力性が低下すると腹壁の抑える力が落ちてしまい、腸が飛び出す鼡径ヘルニアになってしまいます。そこで、この腹壁の力を取り戻してやる必要が出てきます。

東洋医学では人間の体を診るときに「陰陽五行」の考えから観察していきます。その考えでみると、「筋肉」は「」がつかさどってるとされており、おなかである「肌肉」は「」がつかさどっています。鼡径ヘルニアになる人はこの「肝」と「脾」の働きが悪くなっているためと考えられていますので、これらの働きがうまくいくように調節していきます。(肝や脾というのは、肝臓や脾臓のことではありません。)

では、どのように調節するのかというと、経絡を使います。人間の体には経絡が流れており、それぞれがどの臓腑と関係があるのかが分かれています。鼡径ヘルニアでは「足の闕陰肝経」「足の太陰脾経」を使います。これらの経絡にある経穴(ツボ)に反応が出ているので、そこに鍼や灸をしていきます。

よく使うツボには「陰交(さんいんこう:内くるぶしの上3cm)」があります。この三陰交は脾経のツボですが、名前の通り「3つの陰経の交わるところ」にあるツボなのです。そのため、足の闕陰肝経と足の太陰脾経が通っているため、鼡径ヘルニアにも用いられます。

このツボも鍼と灸の両方がよく効きます。特に鍼を刺してその持ち手に灸を付けて温める「灸頭鍼」はより効果的です。体全体を温めてくれる効果もあるので冷え性の人などにも良く使用されています。

このように肝と脾の働きを高めておくと、筋肉や肌肉がよい状態になり、鼡径ヘルニアが飛び出すことを防いでくれます。

まとめ

鍼灸治療では腹診のときにおなかの力も診ています。たとえ、そのとき鼡径ヘルニアになっていなくても、おなかの力が弱くなっている患者さんがいれば、あらかじめ肝と脾の働きを高める治療をしておき、鼡径ヘルニアを未然に防いでいきます。これが最初に出てきた「未病治」に当たります。鍼灸治療では病気になってから治療するのではなく、常に体を観察し、病気になりそうな状態を察知したら病気になる前に対処していきます。

そのためには、日頃から定期的に鍼灸治療を受けておくのがよいでしょう。特に病気や症状がなくとも、月に一度治療を受けておけば、鼡径ヘルニアに限らずさまざまな病気を未然に防ぐことができるでしょう。



スポンサードリンク

サイト内検索

ブログランキング

アクセスカウンター

Copyright(c) 2011 養生灸のススメ All Rights Reserved.