子宮がんと鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.12.10

鍼灸治療では

現在日本人の女性では、新たに診断されるがんとして子宮がんが4番目にあがります。子宮頸がんは若い世代(20歳代)からなる人も増えており、子宮体がんも多くおられます。そんな子宮がんの患者さんが鍼灸院に来院されることもありますので、今回は子宮がんの患者さんに対して鍼灸治療をどのように行っていくのかを考えていこうと思います。

原則的には

まず、なんといっても子宮がんは、鍼灸治療の適応症ではありません。そこで、鍼灸師は患者さんが子宮がんであると疑われる場合はすぐに病院を受診してもらいます。特に子宮体がんでは初期から現れる症状として「不正出血」があります。これがあるときは、紹介状を書いて病院に送るようにしています。

不正出血などやおりものの色や量、においなどが子宮体がんの初期症状としてあるので、患者さんには生理などについても聞くようにしています。男性の鍼灸師に言いづらい方は女性鍼灸師に相談するといいかもしれません。最近は、女性専科と標榜している鍼灸院などもあります。子宮体がんなどは早期に見つけて手術などを行えば、それだけ治る確率も上がりますので、見逃さないようにしましょう。

精神的なケア

さて、子宮がんは主に手術が治療法として選択されます。検査によって子宮のどこにがんができたのかを把握し、その部位を切除することになります。なかには子宮をすべて切除することもあります。

このような手術を行うと、女性にとっては大きな喪失感に悩まされることがあります。特に子宮は女性にとって非常に重要な器官であり、それがなくなるというのは想像以上のものです。これは乳がんの手術で乳房を切除した患者さんにも起こりえます。

この喪失感は時間を置くことで、徐々に受け入れていくことになるのですが、なかなか難しい場合もあるでしょう。子宮がんの手術を行った患者さんを鍼灸治療する場合にはこのような心の喪失感に対してもケアしていく必要があります。

このケアとは、何か特別なことをするのかというとそうでもありません。ただひたすら患者さんの話に耳を傾けることが大切になるのです。鍼灸治療は行っている治療所によっても異なりますが、多くは時間をかけて治療することになります。その治療のなかで体の状態を診ながら治療していくのと合わせて、患者さんが心に込めた思いに耳を傾けることで吐き出してもらいます。こうすることで、身体面と合わせて精神面もケアしながら治療を進めていきます。

また、東洋医学には心身一如というものがあります。これは「心は体と密接にかかわっている」という意味で、心の異常が体へと現れることを意味します。また、逆に体へ治療を加えることで心も治療することができます。精神的なケアをする場合にはこのような観点からも身体の治療を行うことが大切になります。

心への影響が大きいツボには「膻中(だんちゅう:両方の乳頭を結んだ線の中央)」があります。ここへ鍼をすると気分がスーッと落ち着いてきます。すぐ下には胸骨がありますので、深く刺す必要はありません。短い鍼を皮膚に水平に入れてテープで止めておく「皮内鍼」などをしておくとよいでしょう。1週間くらいならば貼り付けておいても大丈夫ですので、貼っておくと効果が持続するでしょう。

手術の影響

さて、心のケア以外にも手術の影響で症状がでることがあります。少し進行した子宮がんの場合には子宮とともにまわりのリンパ節も切除することがあります。そうすると、リンパ液の流れが悪くなって足がむくむことがあります。この場合も鍼灸治療をすることで改善することがあります。

むくみに対しては「陰交(内くるぶしの上3cm)」や「足三里(あしさんり:膝の下3cm、脛骨の外1.5cm)」などがいいでしょう。鍼を刺してしばらく置いておく置鍼をするとよいでしょう。また、ふくらはぎに鍼を刺してパルスをかける通電療法もいいと思います。通電することで下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)を収縮させることで足の血流を促しむくみを改善します。

むくみはすぐに改善しないかもしれませんが、足の重たい感じなどは比較的早期に改善されていきます。足が重たいのは意外とつらいものですので、改善すると助かる患者さんも多いと思います。

そのほか、手術の影響として更年期障害や骨粗しょう症が起こることがあります。更年期障害は子宮と一緒に卵巣を切除することでホルモンのバランスが崩れてしまうために起こります。これは体全体の状態がおかしくなってしまいますので、全身の状態を診て治療していくと効果があります。

更年期障害ではのぼせなどのように頭に熱がたまった状態が続いてしまいますので、これを改善するだけでも非常に楽になることもあります。いわゆる頭寒足熱の状態を目指していくようにします。のぼせをとるには頚や肩に鍼をして、スッと筋肉の緊張を取ってやり、足のほうにも鍼をしていくといいでしょう。「肩井(けんせい:頚椎と肩関節の中間)」や「行間(ぎょうかん:足の甲、第1・2指の骨の中間)」などに鍼をするといいでしょう。また、「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」に灸をするのもいいでしょう。スーッと気分が落ち着いてきます。

東洋医学的に

手術では子宮と切除します。この子宮は東洋医学的には生殖器に分類され、いわゆる「腎」がつかさどっています。この腎は腎臓ではなく「腎の気」のことで、生殖器のほかにも身体の生命エネルギーを調整しています。子宮がなくなることで腎の働きも乱れてしまいますので、鍼灸治療では「腎」を調整する必要があります。使うツボは「照海(しょうかい:内くるぶしの下1cm)」がよいでしょう。このツボは「足の少陰腎経」に属するツボで、腎とかかわりの深いところです。ここへは毎日灸をしてやるとよいでしょう。自宅でせんねん灸などをしていくといいでしょう。

腎は他に「骨」にも影響を与えています。子宮がんの手術の後、骨粗しょう症を防ぐ意味でも腎の調整はやっておくといいでしょう。ほかには「腎兪(じんゆ:第2腰椎の外1.5cm)」が効果的です。ここには、鍼を刺してその鍼も持ち手に灸を付けて温める「灸頭鍼」を行います。鍼の刺激と灸の熱を同時に体に伝えることで効果はより上がります。骨粗しょう症の鍼灸治療については以前も書いていますので、そちらも参考にしてみてください。

まとめ

以上のように、鍼灸治療でも、子宮がんの患者さんに対して治療を行っていきます。がんそのものは、鍼灸治療を行って治ることはありませんが、患者さんの体の調子をきめ細やかに診て、自然治癒力が最大限まで上がるようにしていきます。そうすることで、生活の質を向上し、再発も予防していきます。手術ができず、化学療法や放射線療法を行っている患者さんも並行して鍼灸治療を行うことで、より治療効果を高めることができると思います。



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