便秘と下痢の鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.12.1

鍼灸治療では

便秘下痢は多くの方が経験される日常生活でよくある症状です。当然鍼灸院に来られる患者さんにも便秘や下痢で困っている人はたくさんいます。鍼灸治療を行う際は、どのような病気で来られた方にも便通の状態を確認し、異常があるなら合わせて治療をしていきますので、今回は便秘・下痢に対する鍼灸治療について考えていこうと思います。

鍼灸治療を行う前に問診を行いますが、なぜそのとき便通異常についても尋ねるかを書いておきましょう。鍼灸治療を治療を受けたことのない患者さんは、「ほかの症状(腰痛など)なのに便通が関係あるの?」と思う人もいるからです。

鍼灸治療とは患者さんの持つ自然治癒力を最大限に高めていくことで、さまざまな病気や症状の治療を行います。そこで重要になるのが、体全体のバランスや体力などです。病気というのは、本来体が持つバランスが崩れてしまったために起こっているので、この歪んだ状態のバランスをきちんと整える必要があるのです。

そして、バランスが崩れると多くは便通異常、食欲不振、不眠などの状態になってしまい、病気や症状が引き起こされます。そこで病気を治すためには、歪みによって発生した便通異常なども治療して、元の自然な状態に戻しておかなければなりません。そのために問診で便通について尋ねるのです。

東洋医学的にも便通は重要

また、東洋医学の考え方でも、便通異常というのは非常に重要なものとして取り上げられています。

人間の体は、もともと体に備わっている「先天の気」と、日常生活で取り入れる「後天の気」を融合させて、生命エネルギーとして活用しています。この後天の気とは、食べ物を食べて取り入れたり、空気を吸って体に取り入れています。

もしこの後天の気がうまく体に取り入れられなければ、どうなるでしょうか。その時は、不足した後天の気を補うために先天の気が消費されてしまいます。しかし、先天の気とは人間が生まれたときに母体から受け継いだもので、限りがあります。もし、先天の気が通常よりも多く消費されると、老化が進んでしまい、最終的には寿命が縮まることにもなってしまいます。

このように、先天の気はなるべく無為に消費させないためにも、きちんと後天の気を取り入れて生活していく必要があります。しかし、ただ口から食べ物をとっていればよいということではありません。なぜなら、食べた分はきちんと消化して、排泄しなければならないからです。正常な便通がなければ、いくら食べたとしてもきちんと後天の気として活用できないのです。このため、東洋医学の面からみても、便通の状態というのは体の状態に深く関わっており、治療を行う際にも気を付けてみておく必要があるということです。

内臓体壁反射

では、鍼灸治療について書いていきましょう。鍼灸治療は体の皮膚表面にあるツボを刺激して、体の中になる臓器の働きをよくすることで治療をしていきます。なぜ、皮膚表面を刺激すれば内臓に影響があるのかというと、「内臓体壁反射」を利用しているからです。

内臓体壁反射とは、内臓に異常があると体壁(皮膚)に影響を与える反射のことです。この反射が現れる皮膚の場所はある程度法則性があり、これがツボの場所と似ているものもあります。そして、内臓が体の表面(皮膚)に影響を与えるのと同じように、皮膚から内臓に影響を与える反射もあります。これが皮膚にあるツボを刺激したときに内臓に影響を与える仕組みです。

便通の異常があるときは、当然腸の異常状態が反射として皮膚に現れています。一般的には、腹部のツボに現れていますので、便通異常を治療する際にはまず腹部のツボをよく利用します。

関元(かんげん:おへその下へ指3本分下がったところ)」がよく効くでしょう。ほかにも、「太巨(だいこ:関元から外に1.5cm)」や「天枢(てんすう:おへその外1.5cm)」などが効果的です。これらのツボは鍼も灸もよく効きます。鍼をするときはおなかにじんわりと響くように、おなかが温かくなるように行います。お灸を行うのであれば、半米粒大の大きさで灸をします。継続して行うほうが効果があり、また便通異常を予防することもできますので、自宅でせんねん灸などをするのもよいでしょう。また、もっと簡単に行いたいのであれば、ツボの部分にカイロを当てているだけでも効果があります。

腸は体の中にあるので、おなかのほかにも腰のツボも腸への影響をよく与えます。よく使うツボは「大腸兪(だいちょうゆ:背骨の外1.5cmで、骨盤の上)」や「腎兪(じんゆ:背骨の外1.5cm、第2腰椎の高さ)」などがいいでしょう。こちらのツボも鍼も灸もよく効きます。押さえるとこたえるところを探して、刺激を与えます。

自律神経

また、便通は自律神経の乱れによっても起こります。そこで、自律神経の働きを整えてやることで、便通異常を改善していくことになります。

鍼灸治療で使うツボにも自律神経に働きかけるものがあります。「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」などはその代表です。百会はその字の通り、「百=たくさん」の経絡が「会う」ところとされています。経絡とは体中に走っている気の通り道で、すべての経絡が交わる百会は体全体の調子を整えます。よくある話で、頭のてっぺんにある百会を押したらお尻の字が治ったということもあるのです。

このように百会は全身の調節ができるツボですので、体のバランスをとっている自律神経にもよく働きかけます。便通異常があるときは自律神経が乱れており、自律神経が乱れているせいでさらに便通異常が起こるという悪循環を繰り返しているため、百会を使いその悪循環を断ち切ります。

ほかにも、自律神経への影響が大きいツボとして「中封(ちゅうほう:内くるぶしの前1cm)」があります。この中封も自律神経のバランスを正常にし、便通異常によく効きます。便通異常のうちでも便秘は長期間煩わされている人も多いので、予防的な意味も込めて、百会や中封に毎日灸をするのがよいと思います。こちらも半米粒大の大きさの灸をしましょう。あまり大きくする必要はありません。

足の裏のツボ

以上のツボは、便通異常である便秘や下痢のどちらにも効果的なものですが、特に下痢がひどい場合には足の裏にあるツボを使うこともあります。

内庭(うらないてい:足の人差し指の裏の真ん中に仮点をつけ、人差し指を曲げてその仮点が足の裏にあたるところ)」が下痢に対して非常に効果的です。このツボには灸をします。通常は灸をすると熱くてたまらないくらいですが、下痢があると熱さを感じにくくなります。そこで、半米粒大の灸を熱さを感じるまで何壮でもすえていきます。これはせんねん灸よりも直に休したほうがよく効きます。

熱さを感じるまで灸をすえると、おなかにお湯が広がっていくような感じがし、ポカポカと温もります。そうすると下痢による腹痛がマシになり、下痢が止まります。このツボは特に食中毒で下痢が起こったときによく使われますが、その他の原因で起こった下痢に対してもよく効きますので、一度試してみましょう。

まとめ

このように鍼灸治療では便秘や下痢などの便通異常を、健康へのパロメーターとして活用しています。実際のところ患者さんでも便秘や下痢に鍼灸が効くことを知らない人も多いのですが、比較的簡単な治療でも長年悩まされていた便秘が改善することもありますので、ほかの病気で治療を受けている人などは鍼灸師に相談してみるとよいでしょう。



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