変形性膝関節症と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.11.26

鍼灸治療では

鍼灸院ではさまざまな患者さんが訪れます。その中でも「腰痛」「肩痛」に並んで「膝痛」の患者さんはその割合が多いといわれています。これらの症状に対して鍼灸治療はよく効きますので、鍼灸師になった者はまずこれらの治療法について学ぶといってもいいくらいかもしれません。膝痛の中でも変形性膝関節症はかなりの割合を占めていますので、今回はこの変形性膝関節症への鍼灸治療について考えてみようと思います。

鍼灸治療の役割

変形性膝関節症の治療法には主に「運動療法」「保存療法」「手術療法」があります。鍼灸治療はこのうち保存療法に含まれます。

変形性膝関節症では運動療法によって、膝を支える筋肉を鍛えることで、体をしっかりと支えることができるようにして、痛みを軽減することが大切になります。しかし、実際に膝に痛みがある状態では、運動するのがつらく、なかなか動かせないということが多々あります。そこで鍼灸治療を行い、痛みを軽減し運動療法を行える環境作りをしていくことになります。実際、患者さんを鍼灸で治療しているときは、痛みが軽くなったころを見計らってどのような運動をするのかをイラストなどを使いながら説明していくことになります。

また、ときどき聞かれますがほかの医療機関と併用して治療をしていくことは問題ありません。例えば整形外科で注射を受けているひとが鍼灸治療を行うことはより治療効果を上げることにもなります。積極的に鍼灸治療を取り入れていくとよいでしょう。

痛みをとる

さて、それでは実際に鍼灸治療ではどのように治療を行うのか考えてみようと思います。

膝痛で来られた患者さんの治療では、やはり膝の痛みを少しでも軽減する必要があります。変形性膝関節症は加齢などが原因となり、太ももの骨(大腿骨)と下腿の骨(脛骨)の間にあるクッション(関節軟骨)がすり減ってしまうために、骨同士が当たったり骨の変形(骨棘)ができることによって痛みが出ます。このため、多くは膝の関節に沿って圧痛点がたくさん出ることになります。

この圧痛点というのは、指などで皮膚を押さえたときにほかの部位よりも痛みが強く現れるポイントのことです。この圧痛点はどの部位が障害されているのかを判断する手掛かりになると同時に、治療のための手段にもなる非常に重要なものです。圧痛点を探し出したら、その圧痛点すべてに灸をすると非常に効果があり、痛みを改善してくれます。

圧痛点が10か所あればその10か所に、20か所あれば20か所にというふうに、すべての圧痛点に灸をすえることが治療成功への近道になります。基本的に痛みがきつい時には圧痛点はたくさん現れますが、治療を続けていくとその数が少しずつ減ってきます。圧痛点が減ってくると痛みもかなりマシになってくることが多いです。灸は半米粒大の大きさで熱さがチカッと感じるように八分灸を行います。これはなかなか素人では行うのが難しいため、治療間隔を詰めて鍼灸師に灸してもらうのがよいでしょう。

もし、自宅で灸をしたいという場合などには、少し効果が落ちますが、灸の数を絞って行うとよいでしょう。圧痛点の中でも特に痛みが強いポイントを3~5か所ほど選んで灸するようにするといいと思います。膝痛も数回の治療ではなかなかよくならないことも多いので、ある程度の期間は毎日行うのがよいでしょう。よく使うツボとしては「曲泉(きょくせん:膝を曲げたときにできるシワの内端))」や「膝眼(しつがん:膝を90度ほど曲げて、膝蓋骨(膝の皿)の下にできる左右2か所のくぼみ)」などが効果的です。特に変形性膝関節症では膝の内側に痛みや圧痛点が出やすいですので、曲泉のあたりはしっかりと圧痛をとらえてツボを決めましょう。

圧痛点の見つけ方

先ほどから「圧痛点を見つける」と言っていますが、実はこれには見つけ方にコツがあります。よく「ツボを押さえてください」というと、たいていの人は指でグリグリと揉むようにしてしまいますが、これでは圧痛点をうまく見つけることはできません。圧痛点やツボを探すときには指を真っ直ぐに立てて、骨に対して力が逃げないように真っ直ぐと抑えましょう。無理に力を込める必要はありません。圧痛点は軽く抑えただけでもビクッとなるように、ほかの部位とは違った感覚が現れます。見つけた部分にはホワイトボードマーカーなどで印をつけておくとよいでしょう。

また、圧痛点はその時によって出てくる場所が違ってくるものです。そのため、灸をするときには毎回圧痛点を取りなおす必要があります。その時の圧痛点をしっかりと見つけ出すことで早く痛みを改善することができます。

反対の膝にも治療する

ほかにも、膝の痛みを治療するときには痛みのない反対の膝にも治療を加えていきます。よく患者さんには、なぜ反対までやるのか聞かれますが、これには理由があります。

普通膝に痛みがあっても、立って歩く機会が出てきます。例えば右の膝が痛い患者さんがいたとしましょう。立って歩こうとすると、右膝に体重(重心)がかかると痛みが出るため、無意識に右膝をかばうような歩き方をしてしまいます。そうすると、左膝には通常とは違う力が加わってしまい、次第に左膝にまで痛みが現れるようになってくるのです。

そのため、右膝の痛みがよくなってきたと思ったら次は左膝に痛みが出てきたということがよくあります。これを防ぐためにも右膝を治療する際にはあらかじめ左膝にも鍼や灸をしておくのです。その段階から治療をしておくと、まだ痛みがない状態なので軽い刺激でも治療効果が現れるので、患者さんの負担にもなりません。1~2穴のツボに鍼や灸を少しするだけですので、時間もほとんどかかりません。

また、歩き方がおかしくなるということは、反対の膝だけでなく足首の関節や股関節、腰などにも知らず知らずに負担がかかっていることになります。そのため、膝の治療でも、体全身の状態を診て、その人の負担のかかっている部位に治療をした方が結果的には治りがよくなります。

炎症・むくみに対して

膝の痛みが強い場合などは、膝に炎症が起こっていたり、膝に水がたまっていることがあります。このようなときも鍼灸治療は効果がありますし、安全な治療法ですので心配はいりません。炎症などは鍼もそうですが、灸をしてもよくなります。鍼は関節の中に深く刺すことはありませんし、灸も半米粒大で八分灸にすれば、灸の痕も残りませんので炎症がひどくなるようなこともありません。

また、たまに膝の水を抜く注射をしたら、鍼灸治療で膝に鍼をしたり灸をしたりするのはまずいのではないかと考える人もいるのですが、これも心配には及びません。上記のように鍼や灸は非常に軽い刺激ですので安全ですし、治療をすることによって膝の炎症を抑え、水がたまりにくくする効果もあるので、治療をした方が早くよくなります。

運動療法と合わせて

さて、最初のほうでも書きましたが、膝痛の治療では鍼灸治療を行うと同時に運動療法を行うことが大切になります。運動療法では、主に大腿四頭筋を鍛えることがメインになるでしょう。大腿四頭筋とは太ももの前面の筋肉で、膝の動きにかかわりの深い筋肉です。

膝の痛みがあると歩く量が減ったりして、すぐにこの大腿四頭筋が弱ってきます。右膝が痛い場合には、膝蓋骨(膝の皿)の上10cmの太ももの太さを測ると、反対の左側と比べると細くなってしまっています。これはまさに大腿四頭筋が弱っていることを示しています。この場合、いきなりウォーキングを行うのではなく、膝に負担をかけないで大腿四頭筋を鍛える運動療法を行います。

運動療法を行うときは、鍼灸治療によって大腿四頭筋の緊張をほぐしながら進めていくとより効果が上がります。使うツボは「梁丘(りょうきゅう:膝蓋骨外端の指3本分上)」や「血海(けっかい:膝蓋骨内端の指3本分上)」などがいいでしょう。鍼も灸もよく効きます。そのほかも脚の筋肉に緊張しているところを上手にほぐしながら運動をしていくのがよいでしょう。

まとめ

膝の痛みで悩む人は本当に多いものです。痛みがあると歩くのがつらくなるため、外出が減ってしまうなど生活の質(QOL)の低下などにもなってしまいます。また、筋肉というのはほんの少し動かさないだけでもすぐに弱ってしまいます。鍼灸治療は膝の痛みによく効きますので、悩んでいる方は早めに治療を受けて、快適な生活を取り戻しましょう。



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