慢性腎臓病と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.11.12

鍼灸治療では

腎臓というのは体にとって非常に重要な働きをしています。腎臓の働きには体液から老廃物などを取り除き、尿として体から排出するという「ろ過機能」があります。この機能が徐々に低下してしまい、老廃物を出せなくなると、体には害のある物質を排出することができなくなります。このようにさまざまな原因によって腎臓の障害が起こった状態を「慢性腎臓病」といいます。この慢性腎臓病の患者さんは鍼灸院にも治療に来られているので、どのように治療をしていくのかを考えていこうと思います。

東洋医学と西洋医学

その前に少し東洋医学について話をしましょう。鍼灸治療とは体にあるツボに対して鍼や灸などを行い、体の自然治癒力を高めることで治療していきます。この際、ツボの使い方などの考え方は東洋医学的な考えで運用することがあります。単純に「ここが凝っているから鍼や灸をする」というわけではありません。しかし、現在の医学は西洋医学をベースにしているため、東洋医学と西洋医学で似たような単語を使い、違う意味を表しているということが多々あります。そして、今回のテーマである「腎臓」についても東洋医学と西洋医学では若干違いがあるので、簡単に説明しておこうかと思います。

まず、西洋医学のおける「腎臓」とは、その名の通り、体にある臓器の「腎臓」を意味します。腎臓はそら豆のような形をしており、左右で2つ存在し、腹大動脈から血液を糸球体に受け取って尿を作り、その尿を腎臓から尿管を通して膀胱に送っています。これにより腎臓は「血液中の老廃物の排泄」や「体内の水分量の調節」を行っています。さらに腎臓には「副腎」という臓器が引っ付いています。この副腎は小さいながら非常に重要な働きをしており、身体の管理をするホルモンを分泌しています。

次に東洋医学でいう「腎」についてみてみましょう。「腎」とは臓器そのものを指しているわけではないので、腎臓のことではありません。いわゆる「五臓六腑」といわれる「臓腑」の1つで、腎臓と副腎の機能を合わせたものを「腎」と呼んでいます。さらに東洋医学的には「腎」は人間の体が生まれつき持っている「先天の気」を内包しています。この先天の気というのは母親から受け継いだもので、食事や呼吸で取り入れる「後天の気」と合わせることで、日々のエネルギーとして使っています。そのため、先天の気が減るというのは、それだけ体から生命エネルギーがなくなるということで、「老化」することを意味します。当然、腎の働きに乱れが出ると先天の気はより多く減ってしまうので、寿命が縮まることになります。身近なものでは「腎」が弱る(腎虚)と腰に痛みがでることもあります。

このように東洋医学で「腎」という場合には西洋医学で使う「腎臓」をイメージすると混乱してしまうことがあります。このサイトでは現代医学である西洋医学をベースに書いていますのが、鍼灸の記事を読む際には「腎」なのか「腎臓」なのか気を付けて読んでおいた方がいいでしょう。

しかし、実際の臨床現場では西洋医学的な考えと東洋医学的な考えを両方使い治療することになります。特に慢性腎臓病の治療には「腎」の働きをよくするツボを使用します。ツボは体を流れるように「経絡」として存在し、特に腎に関係のある経絡として「足の少陰腎経」があります。この腎経のツボなどは「腎臓」というよりは「腎」の働きをよくするために使いますが、結果的に腎臓の調子を取り戻してくれる効果もあります。

慢性腎臓病の治療

さて、それでは慢性腎臓病の治療について書いていきましょう。腎臓の調子が悪くなってたんぱく尿が出ると、そのたんぱく尿によってさらに腎臓に負担がかかり腎臓が弱っていきます。腎臓が弱って老廃物が排出できなくなると、だるさや吐き気、食欲低下が現れますが、これらの症状によって活動量が減ったり食事が進まなくなることでさらに腎臓に負担がかかります。これらの悪循環を止めるためにも鍼灸治療では体全体の調子を整えるようにして治療をしていきます。

食欲低下には胃や腸の働きをよくするツボを使用します。「中脘(ちゅうかん:おへそとみぞおちの中間)」や「足三里(あしさんり:膝の下3cm、脛骨の横1.5cm)」などがよいでしょう。どちらのツボも鍼や灸をしていると、胃のあたりが動いたり温かくなってくる感覚があります。そうすると食事もしやすくなり、食べることによって体にも元気が出てくるでしょう。しばらくは継続して治療する方がよいのですが、通院が難しい場合には自宅で灸をすえるのもよいでしょう。灸を自分でするのが難しい人はせんねん灸でも構いません。毎日時間を決めて灸すると体の調子をいい状態に保つことができます。そうなるとだるさや吐き気なども改善されてくるでしょう。

そのほか、腎臓には体内の水分量を保つ働きがあるのですが、慢性腎臓病になると水分量の調節ができなくなり体がむくんできます。このむくみも腎臓に負担をかけてしまうので、治療して解消してやる必要があります。むくみには「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」や「照海(しょうかい:内くるぶしの下1cm)」などがよく効きます。このツボには灸をするのがよいでしょう。むくみがあると熱さを感じにくくなるという特徴があるので、熱さを感じるまで何壮でもすえていきます。このツボへの灸は継続して行う必要があります。続けていると尿が出やすくなり、むくみがマシになってくるのですが、さらに続けましょう。それまで50壮、100壮とすえなければ熱さを感じなかったのが継続していると、数壮すえただけでも熱くなるように変わってきます。こうなると、むくみはかなりマシになっており、灸を中断してもむくみにくい体になっています。尿を出す効能は失眠が優秀ですが、照海は「足の少陰腎経」のツボですので、一緒に使うとさらに効果が上がることもあります。そのときのツボの反応を確認して行っていきます。

さらに「腎」の働きをよくするツボとしてよく使われる「腎兪(じんゆ:2・3番目の腰椎の横1.5cm)」があります。ここはちょうど腎臓の裏にあたるツボで、「足の少陰腎経」にも深く関わっています。そのため、腎臓疾患だけでなく、体に根本的な元気をつけるため、さまざまな患者さんの治療で使用されています。このツボは少し体の中心に向かうように斜めにさしていくと、何ともいえない気持ちの良い響きが出て、体が楽になります。また、体を心から温めるために「灸頭鍼(きゅうとうしん)」を行うこともあります。鍼も灸もない場合には、この辺りをカイロで温めるのも「腎」の働きをよくし、体の自然治癒力を高めることになります。

まとめ

慢性腎臓病は厄介な病気です。早めに対処して治療をすればよいのですが、透析療法になると治療そのものが体への負担になってしまいます。そこで、透析療法で血液のろ過や水分量の調節を行うのと合わせて、鍼灸治療をすればさまざまな症状を解消して生活の質(QOL)を上げることにもなります。慢性腎臓病は進行すると一生付き合うことになる病気ですので、鍼灸治療でもその手伝いができると思います。



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