脳卒中と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.11.8

鍼灸治療では

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり、破れたりして起こる病気のことです。脳卒中は「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」などがあります。脳は人間の体の中でもとりわけ重要な臓器ですので、ここに障害が起こり後遺症などが残ると生活の上でも不便なことが増え介護が必要になることもあります。それまでは元気だった人が、脳卒中を起こし、次に会った時には体が麻痺していたり声が出ないこともあるのです。鍼灸院の患者さんの中にもそのような人がいますし、脳卒中を起こした人のところに往診に行くこともありますので、今回は脳卒中に対しての鍼灸治療について考えていこうと思います。

脳卒中の患者さん

まず、脳卒中を起こした場合には速やかに病院に搬送されて、救急医療を受ける必要があります。そして、患者さんは入院し、身体の状態を診ながら急性期のリハビリテーションに取り組むことになります。この急性期リハビリテーションで、「座る・立つ」や「食事」「排泄」などの基本的な動作、生活の土台ともなる身体の使い方を取り戻すことになります。

脳卒中の救急医療について

脳卒中の急性期リハビリテーションについて

そして、発症から2週間ほどが経過し、全身状態が安定してきた回復期には回復期リハビリテーションを行うことになります。これは主に以前の生活動作をいかに取り戻せるかになり、毎日休まず高密度・高強度のリハビリテーションを行うことになります。この回復期リハビリテーションを6か月以上行ったら、医師の判断により患者さんは自宅に帰り生活するようになります。ただし、自宅に戻っても維持期のリハビリテーションとして体を動かし続ける必要はあります。

脳卒中の回復期リハビリテーションについて

さて、現代の医療では脳卒中を発症した患者さんに対してこのような治療をしていきます。リハビリテーションでは、マッサージなどを行うのですが、残念ながら今のところリハビリテーションに鍼灸治療を行う医療機関は少ないです。これは保険制度の問題などや鍼灸治療の効果などが一般に知られていないためですが、少しずつ脳卒中患者にリハビリテーションと鍼灸治療を合わせて行ったときの効果などの研究結果などを出している医師や鍼灸師も増えているので、今後行われるようになるかもしれません。

とにかく現状では、鍼灸治療で脳卒中の患者さんを診る場合、自宅などの帰ってきた維持期が対象になることが多いです。脳卒中の後遺症は、発症した時の脳の状態やその後のリハビリテーションによって程度が変わってきますので、よくある後遺症についての治療の考え方をみてみましょう。

身体の麻痺に対して

脳卒中では、脳の血管が障害を受けますが、その後遺症として麻痺がでることがあります。脳は身体の筋肉を動かすように命令を出しているので、血管が詰まったり、出血して神経に酸素や栄養が届けられなくなるために麻痺が起きてしまいます。身体の右半身が麻痺した場合は左脳が、左半身が麻痺した場合は右脳が障害を受けています。ちなみに医学的に「右まひ」という場合は「利き手側のまひ」という意味ですので、左利きの人は「右まひ=左半身麻痺」となります。

さて、鍼灸治療を行った場合に麻痺が治るのかというと、一度障害された神経が元通りになることはありません。では、鍼灸治療を行った場合、麻痺は絶対に改善しないのかというと、改善する場合もあります。これは、わかりやすく説明すると、「神経が完全には死んでいないけれども、身体は麻痺して動かない」ということがあり、このときに鍼灸治療を行うと麻痺が改善することがあるためです。鍼灸治療による刺激によって、神経が活性化されたり、血流の改善で神経が機能を取り戻すことにより、身体の動きがよくなることがあります。また、この「神経の仮死状態」というのは、検査などではわかりません。そのため、実際に治療してみないと改善するかどうかは判断できないことが多く、麻痺していても治療してみることが大切です。

そこで、鍼灸治療では麻痺の改善を目的として、「井穴刺絡」を行うことがあります。井穴とは指先にあるツボのことです。手や足の先の爪の角にあるツボを井穴といい、ここに刺絡をして血を少量出させます。効果は若干落ちますが、灸をしても麻痺が改善することもあります。これは、指先からの刺激を感覚神経を伝って脳に送り、神経を活性化させることにより麻痺の改善を目指します。また、井穴刺絡には血流の改善をよくし、冷えを解消する効果もありますので、これによって神経を活性化する働きもあると考えられています。灸は爪の角ではなく、指の一番先に行うほうが効果がよいこともあります。これは「指尖の灸」とも言います。一度試してみるとよいでしょう。

関節拘縮に対して

そのほか、脳卒中の患者さんに多い後遺症として、関節拘縮があります。これは体の関節が固まってしまい、動かしにくくなってしまいます。特に麻痺した側に多く起こりやすいので、麻痺の治療と合わせて行うことが多いです。また、関節拘縮は体を動かさないとなるので、今拘縮がない場合でも気を付けておく必要があります。腕が動かなくなったりすると、ものを持ったり、服を着たりするなどの日常生活の簡単な動作が行いにくくなるので、生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。しっかりと治療していく必要があります。

鍼灸治療ではまず筋肉を温めて動かしやすい状態を作りやすくしていきます。関節拘縮があると、動かそうとしたときに痛みが出て動かせないことも多いですが、鍼や灸をして痛みをとることによって体を動かしやすくする効果もあります。

痛みをとり体を温める方法として「灸頭鍼(きゅうとうしん)」を行うのがよいでしょう。これは、鍼を刺した状態で鍼の持ち手の先のもぐさを付け、そのもぐさを燃やして体を温めていきます。もぐさと皮膚は離れているため、やけどすることはありません。灸の熱により体の中まで温もり、しばらくホカホカとした温もりが続きます。これは遠赤外線などではできない灸独自の効果といえます。灸頭鍼は固くなった筋肉に対しても行いますが、その筋肉の拮抗筋に対しても行います。拮抗筋というのは、反対の働きをする筋肉のことです。例えば、腕に入れて力こぶを出したとき、ポコッとこぶのようになるのは「上腕二頭筋」です。これは上腕二頭筋が縮んで膨らんでおり、反対に「上腕三頭筋」は伸ばされた状態になっています。これが上腕二頭筋に対する拮抗筋に当たります。筋肉が縮んだ時には、ほかの筋肉が伸ばされた形になりますので、治療の際にはどちらも診ておかなければなりません。

褥瘡に対して

また、寝たきりの人には「褥瘡」、いわゆる「床ずれ」ができます。これは意外と簡単にできてしまいますので、気を付けておく必要があります。まったく体が動かない人には15分間隔で体の向きを変えていくことが勧められているくらいで、寝たきりでなくとも高齢者などは、少し寝込んだだけでもなってしまうことがあります。

褥瘡には灸がよく効きます。褥瘡は外から見える範囲以上に皮膚の中で進んでいるので、灸を褥瘡のまわりに何か所もすえていきます。これはツボを意識する必要はなく、皮膚の内部も含めて、褥瘡になっている範囲全体をまんべんなく灸します。特に早期に発見して灸すればすぐによくなります。灸の大きさは半米粒大で、あまり大きくなりすぎないように行いましょう。

褥瘡はラップ療法でもよく改善します。大切なのはすぐに見つけて治療をすることです。高齢者の場合は、痛みを感じにくくなっていて本人が気づかないこともあるので、身体が痛いなどと訴えた場合は、家族や介護の人などが確認しておくことが大切です。

まとめ

脳卒中の患者さんについての鍼灸治療について書いてきました。脳卒中の患者さんにはこれ以外にもさまざまな問題が起こりますの出、鍼灸治療を行い少しでも快適な生活を送れるように治療をしていきます。また、鍼灸治療は時間をかけながら行いますので、治療の間が患者さんの話にじっくりと耳を傾けながら治療するようにしています。麻痺などがあると行動範囲が狭くなり、社会との交流が希薄になってしまいますので、その意味からでも「話を聴く」ことは治療をする上でも大きな意義があります。往診なども積極的に行い、患者さんを支えていくことが大切だと思います。



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