五十肩と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.11.2

鍼灸治療では

肩がものすごく痛くなり、動かせなくなってしまう五十肩の患者さんは鍼灸院でもよく診ます。やはり40歳代の人もいれば、70歳を過ぎた方も来られます。ちなみに「五十肩」というのは病名ではなく、総称のようなもので、医学の教科書などでは「いわゆる五十肩」などと書かれています。別の言い方では「肩関節周囲炎」といわれており、肩関節のまわりの組織(筋肉、腱、靭帯、関節包など)に炎症が起こり、激しい痛みが出てきます。今回はこの五十肩について、鍼灸治療でどのように対応するのかを考えていこうと思います。

治療の基本的な考え方

五十肩とは、本当に痛みがつらく、患者さんは大変な思いをされます。特に痛みで夜も眠れない時などは、気が滅入ってしまいます。しかし、五十肩というのは1年ほどたつと自然に治まってくるものです(人によっては治癒までに2年以上かかることもあります)。痛みでつらいときは「一生このままだとどうしよう」などと考えてしまいますが、まずは自然に治るものだということを頭に入れておきましょう。あらかじめ病気についてわかっていれば、少し心も落ち着くものです。

それでは、自然にどんどん良くなっていくのかというとそうでもありません。五十肩はある程度決まったパターンをたどってよくなっていきます。まず最初は「急性期」が2週間ほど続きます。肩は動くのですが、激しい痛みが続くのが特徴です。この急性期を過ぎると「慢性期」に入ります。これは2週間目から半年くらい続くもので、痛みは少しずつマシになるのですが、肩が動かしにくくなります。最後は「回復期」です。痛みはほとんどよくなり、肩も少しずつ動かせるようになってきます。

治療の考え方としては、この3つの病期がなるべく早く過ぎるようにしていきます。治療をしない場合、急性期・慢性期・回復期を合わせると治るまでに1年かかるとするならば、治療をして、より早く治るように目指します。しかし、多くは半年以上かかることもあるので、1~2か月で治ることは少なく半年以上治療を続ける意思を持つように説明しています。しっかりと治療を継続して、少しでも早くよくなるようにしていきましょう。

急性期に対する治療

急性期は痛みが強く、肩を動かしたときに痛みが出ます。この時期はあまり動かさないほうがよいでしょう。鍼灸治療では主に痛みをとるための治療をしていきます。

急性期は局所である肩にも鍼をしますが、あまり刺激が強いと痛みがきつくなることもあるので、軽めの刺激を加えて痛みがマシになるようにしてきます。このときは「皮内鍼」がいいでしょう。皮内鍼とは、1~2mmの短い鍼を皮膚に対して並行に沿わして入れていきます。鍼を刺した後にはテープで固定します。鍼が体内に入るような心配はありません。このように短い鍼を少し皮膚に入れるだけなので、ごく軽い刺激で済むのですが、非常に効果が高く、痛みを軽減してくれます。鍼は1週間ほどは入れたままにしておけるので、その間も治療効果は続きます。ツボでいえば「(けんぐう:肩関節の前方のくぼみ)」や「肩井(けんせい:肩関節と頚椎の中間)」などが効果的です。また、腕の方のツボも一緒に使用すると肩の痛みを抑える効果が高まります。「手三里(てさんり:肘を曲げてできるシワの外端から指3本分下のところ)」などがいいでしょう。

人間というのは不思議なもので、痛みを抑えると無意識に腕を使ってしまいます。例えばカバンを痛い側の腕で持ったり、物をとる動作などをしてしまいます。しかし、鍼をして痛みが落ち着いていても五十肩が治ったわけではありませんので、腕を使ったことによってまた痛みが出てしまいます。治療をした後は、無意識に腕を使わないように注意しておきましょう。

慢性期・回復期について

急性期を過ぎて、慢性期に入ってくると少しずつ痛みがマシになってきますが、腕が動かないようになってきます。このころになると、鍼の刺激はもう少し増やしても大丈夫になってきます。慢性期と回復期はそこまで治療の仕方に大きな違いはありません。基本的には痛みが残っていればそれを軽減する治療をしながら、動かしにくくなっている肩関節の可動域を広げる治療をしていきます。

慢性期に入ると、肩関節を温めて血行をよくしていくことが大切です。血行をよくすると、痛み物質が処理されやすくなり痛みの軽減にもなりますし、動きの悪い組織をゆるめることで可動域が広がります。そこで、治療には「灸頭鍼(きゅうとうしん)」というものを使用します。この灸頭鍼というのは、鍼を刺して、その鍼の先の持ち手の部分にもぐさを付けて温めていく方法です。もぐさと皮膚の距離は離れているので、灸の痕がつくことはありません。そのため、通常よりも大きなもぐさを使用することができ、よく温めることができます。灸で温めると、温め終わった後もポカポカと温もった感じが続きます。これは赤外線などで温めても得られない、灸独特の効果です。

使用するツボは、その時の状態を診ながら決めていきます。上記の「肩」や「肩井」、「手三里」も使用することがあります。そのほかでは、「天宗(てんそう:肩甲骨の中央)」も非常に効果が高いです。この天宗は肩のこりなどでもよく使うツボなのですが、五十肩にも使用します。天宗に鍼をすると、肩の前方の方に響く感じがします。この響く感じを出してやると、肩の動きがよくなることが多いです。また、肩の動きは肩甲骨の内側(肩甲間部)の筋をゆるめることでもよくなります。ここにも鍼をしていきます。また、この肩甲間部をゆるめるツボとして変わったところでは、「神門(しんもん:手首のしわの端で、小指側のところ)」があります。この神門に鍼をすると、肩甲間部が緩んで、肩を上げやすくなります。

また、回復期に入ると積極的に動かした方が治りが早くなります。そのため、鍼灸治療を続けながら運動療法をしてもらいます。やり方は簡単で、500mlのペットボトルに水を入れて痛い側の手に持ちます。体の正面にイスなどの台を置き、反対側の手で体を支えながら、手に持ったペットボトルをブラブラと揺らします。その際、体は地面と水平になるように腰を曲げて行います。この運動は肩関節の可動域を広げる効果があります。注意点としては、筋トレではないので無理に力を入れないことです。自然にブラブラさしていると、重力で肩関節が広げられます。

まとめ

このような治療により五十肩はよく治ります。痛みが出たときには早めに治療を受けるようにしましょう。また、鍼灸治療には五十肩を予防する効果もあります。普段から鍼灸治療を続けていると体の血行が良くなるので、五十肩になりにくく、なった場合でも治りは早いです。五十肩は血行のほかにもストレスなどがたまった時に起こりやすいので、治療を続けてストレスもためないようにしておきましょう。



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