熱中症と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.10.28

熱中症を防ぐために鍼灸治療を活用する

熱中症について勉強したので、少し鍼灸治療の面からも何ができるのかを考えてみようと思います。

といっても、熱中症を起こし、意識がなくなるような場合にはやはり救急車を呼ぶことが大切になります。そこで、まずは簡単に熱中症についておさらいしておこうと思います。

熱中症というのは、人間の持つ体温調節能力が限界を超え、身体からうまく熱を逃がすことができなくなった結果さまざまな症状が起こる病気です。人間の体は気温が上がると、皮膚の表面の血管が広がって熱を逃がしたり、汗をかき、その汗が蒸発する際に体の熱を逃がしたりしています。体に熱がこもって出てくる症状には次のようなものがあります。

  • Ⅰ度:めまい、立ちくらみ、こむらがえり
  • Ⅱ度:頭痛、吐き気、おう吐、倦怠感
  • Ⅲ度:ふらふらする、立てない、意識障害

Ⅰ度~Ⅲ度までありますが、いきなりⅡ度やⅢ度の症状が現れることもあるので要注意です。Ⅰ度の症状であれば、涼しいところに移動して休んでおけばよいのですが、Ⅱ度やⅢ度の場合には必ず医療機関を受診するようにしましょう。

とっさのときの鍼灸治療

このように熱中症が起こった場合には静かに涼しいところで安静にするのが基本です。あまり鍼灸治療で熱中症の患者さんを診る機会もないと思いますが、すぐに救急車を呼べない場合などに役立つこともあるかもしれませんので、対処法について簡単に紹介しておこうと思います。

鍼灸治療では「気付けの鍼」というものがあります。これは、失神などして意識がない状態の人に行う施術で、意識を取り戻すために行うものです。これは「人中(じんちゅう:鼻の下で、鼻と唇の溝の中間)」というツボが効果といわれています。ここに鍼で刺激を与えると意識が回復するそうですが、私は実際に試す機会がなく、経験がありません。文献などではかなり痛い刺激になるとされています。

そのほかに、意識がない患者さんには「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」がいいとされています。ここは意識が戻るまで灸をすえるといいようです。どこか出かけたときなど(山の中など)、救急車がすぐに来られない状況で、鍼やもぐさがあるときは効果を期待して試してみるのもいいかと思います。

東洋医学では

さて、次は熱中症について東洋医学的に考えてみようかと思います。上でも説明しましたが、熱中症というのは皮膚の血液量調節や汗の分泌がうまくいかなくなり起こってしまいます。この働きはは東洋医学では「衛」が担当しています。「衛」とは何か説明しておきましょう。

人間は口から食べ物を食べて生きています。この食べ物のことを「水穀」といい、この水穀を脾胃で消化吸収しています。脾胃で消化された水穀は「衛」と「営」に分かれ、体中に送られます。「営」は体の栄養素として血管を通して体中に送られています。そして「衛」は皮膚に送られて体の外からの刺激をガードする働きをしています。この「衛」の働きというのが、体温調節としての汗を出したり、皮膚の血液量の調整なのです。

つまり熱中症というのはこの「衛」の働きがうまくいかなくなり、外からの刺激(高温・多湿など)によって体に熱がこもることをいうのです。そこで、東洋医学の治療ではこの「衛」の働きをよくするようにしていきます。

高齢者で熱中症が多いのは、食べたもの(水穀)を脾胃でうまく衛と営に分けることができず、衛の量が減ってしまうからと考えられます。そのため、まずは脾胃の働きがうまくいくように治療します。よく使うツボは「足三里(あしさんり:膝の下3cm、脛骨の外1.5cm)」や「胃の六つ灸(背中のツボ左右6か所、胃の裏に当たるところ)」などがいいでしょう。鍼も灸もよく効きます。高齢者の場合は慢性的に脾胃の働きが弱くなっているので、続けて治療する必要があります。自宅でやる場合にはせんねん灸を使うといいと思います。家族の人がいれば話をしながら背中の灸をやってもらうとコミュニケーションの一つにもなるでしょう。脾胃の働きがよくなれば、食事もおいしく食べられ、体力がつくため体温調節能力だけでなく、風邪をひきにくくなるなど体全体の調子がよくなるでしょう。

また、脾胃の働きがよくなり、「衛」の量が増えても、つくられた衛がきちんと皮膚に届けられて外からの刺激をガードしなければ意味がありません。脾胃でつくられた衛を皮膚に届ける役割は肺がしています。しっかりと衛を届けてもらうためにも肺に対しても治療を加える必要があります。肺といっても直接肺にめがけて鍼をするわけではありません。人間の体には気の通り道である経絡が体表にありますが、肺に関係する経絡が腕にあります。これは「手の太陰肺経」といい、胸部から腕を下って親指まで通っています。この肺経に鍼や灸をすることで、肺の働きを高めてやることができます。よく使うツボとして「尺沢(しゃくたく:肘のしわの外側)」があります。ここも鍼や灸をするとよく効きます。

このように脾胃や肺の働きを日頃から高めておくと、体温調節能力がよくなり、熱中症になりにくくなります。もしなったとしても、重症になりにくいというメリットもあります。また、体温調節能力は体調不良によっても低下するで、それに対しても治療しておくといいでしょう。睡眠不足になると高齢者はすぐに体の機能が低下してしまいますので、気を付けておかなければなりません。「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」に熱さを感じるまで灸をするのがよいでしょう。不眠症と鍼灸治療でも詳しく書いているので参考にしてください。

そのほか、高齢者に多いのがトイレの問題です。夜に水分をとると何度も小便で起きてしまうといってあまり水分を取りたがらない人もいます。しかし、それでは体の水分量が減ってしまい熱中症になりやすいのです。そこで、トイレに起きるのを減らすために「照海(しょうかい:内くるぶしの下1cm)」などに鍼や灸をします。トイレに行く回数が減れば、患者さんも多めに水分を取ることができ、熱中症防ぐことができるでしょう。

まとめ

今回は熱中症に対しての鍼灸治療について書いてきました。熱中症に対して鍼灸治療が行えるというのは、知らない人がほとんどでしょう。もしかすると鍼灸師でも知らない人もいるかもしれません。確かに熱中症で倒れた場合には病院を受診する方がよいでしょう。しかし、予防的な面も考えると、鍼灸治療がまったく何もできないというわけではありません。治療を継続して体調を整えていると熱中症を防ぐことができるので、日頃から治療を受けておくといいと思います。



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