肺がんと鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.10.16

肺がんの患者さんに対して

肺がんの患者さんを治療することが鍼灸院でもあります。今まで鍼灸治療を受けていた患者さんが肺がんになり、手術を受け、その後の体調管理も含めて鍼灸治療を続けているケースなどもあります。がんそのものを治療するためには西洋医学による治療(手術や放射線療法、薬物療法など)が必要になりますが、その後の生活のためには鍼灸治療も合わせて行うのがいいと思います。そこで、肺がんの患者さんに対して鍼灸治療でどのように対応していくのかを考えてみようと思います。

肺がんになった場合

患者さんが肺がんになった場合などは、やはりまずは西洋医学による治療を行う必要があります。当然ですが鍼灸治療によってがんが小さくなるようなことは、まずありません。しかし、鍼灸治療を行うこと自体が無意味かというと、そうとは言えません。肺がんの場合、がんの進行度(ステージ)などにより、西洋医学での治療法が変わってきますが、ステージ以外でも、その患者さんの年齢や体調により治療法を検討する必要があります。つまり、肺がんが早期に見つかっても、患者さんに体力が残っていないと、手術などが行えないことがあるのです。治療の選択肢を増やすためにも、体調を整えることが大切になり、副作用のない鍼灸治療は役立てると思います。

また、手術の後にも体調に気を付ける必要があるでしょう。体調を整えて自然治癒力を高めることで、がんの再発を防ぎ、また生活の質(QOL)の低下を防止することができます。

体調を整える

では、鍼灸治療によってどのように体調を整えて体力をつけていくのか、考えてみましょう。まず重要になるのは、「食欲」「便通」「睡眠」です。これらが悪くなると生活の質(QOL)が低下してしまい、体力が落ちてしまうので、治療していきます。

●食欲

食欲は特に重要で、食欲が低下し、ものが食べられなくなるとすぐに体力が落ちてしまいます。東洋医学では食欲に関係する消化・吸収の働きは、「脾胃」がつかさどっていると考えられています。人間の体は生まれたときから元々持っている先天的なエネルギー(先天の気)と、食べ物を食べて体に取り入れるエネルギー(後天の気)が合わさって生命活動をしています。もし、体に取り入れる後天の気が減ってしまうと、その分を先天の気で補うことになります。しかし、先天の気は元々持っている限られたエネルギーなので、それが減ってしまうというのは、寿命が縮んでしまうようなものです。同じ年齢でも肉体的な年齢が違ってしまうのは、このようなことが一因になっており、こうなるとさまざまな病気になりやすくなってしまいます。そして、がんも老化現象の1つですので、脾胃の働きを調整して気が充実するようにしていかねばなりません。

脾胃の働きを整える目的で使うツボを紹介していきましょう。まず、胃の募穴である「脘(ちゅうかん:へそとみぞおちの中間)」が効果的です。鍼をするのもよく効きますが、食欲を出すためには自宅で毎日せんねん灸をするのもいいと思います。この中脘は胃の働きをよくし、体力をつけるのにもってこいのツボです。

ほかに、足の太陰脾経の「陰交(さんいんこう:内くるぶしの上3cm)」も脾胃の働きを高めてくれます。三陰交というツボは「3つの陰経の交わるところ」という意味があります。そのため、1つのツボで3つの経絡に影響を与えることができる、非常に優れたツボなのです。脾胃に働きをよくするほかにも、血液循環をよくし、冷えを改善したり、婦人科疾患にもよく効きます。

●便通

さて、食欲の改善とともに便通についても考えておく必要があります。便秘になった経験のある人はよく分かると思いますが、何日も便が出ないというのはつらく、苦しいものです。逆に下痢になった場合も、体へのダメージが大きく、体力を消耗してしまいます。また、人間の体というのは口からものを食べて、体内で吸収し、必要のないものを排泄するシステムになっています。もし、この排泄がうまくいかなくなってしまうと、食事もできなくなってしまいますので、一緒に治療していく必要があるのです。

便通の改善には灸を使うのがいいでしょう。ツボは「神闕(しんけつ:へそにあたるところ)」がいいでしょう。このツボはおへそですので、そのまま灸をするというわけにはいきません。そこで「塩灸」という灸法を使うといいでしょう。まずへその上に和紙をひき、その上からへその穴を埋めるように塩を置きます。その塩の上にもぐさを置いて灸をします。もぐさが燃えてくると、塩がじんわり温もり、おなか全体がポカポカと温もって便通がよくなります。我慢できないくらい熱くなったら、和紙ごと塩ともぐさを取り除きましょう。和紙と塩があるので火傷することもなく、非常に気持ちよくなると思います。

●睡眠

そのほかに、睡眠状態の改善を行うことも大切です。多くは体全体のバランスを整えるようにして、眠りやすい環境を作ることが大切になります。詳しくは「不眠症と鍼灸治療」でも書いていますので参考にしてください。

このように体調を整えることで、手術を行える体作りをしたり、手術後のための体力をつけていきます。

手術後の痛みに対して

手術後は体調を整えて、自然治癒力を高め、再発のリスクを減らすことが大切になります。また、それとは別に手術では胸を切るために痛みが出たり、腕が動かしにくくなることもあるので、それらに対しても治療していきます。

胸を切ったのなら痛みが出るのは当然で、これは自然に治っていきます。しかし、痛みがあるのはつらく、体力も低下することになってしまうので、痛みが少しでもマシに、少しでも早く治るようにしておいた方がいいでしょう。治療は手術痕の周辺に浅く鍼を刺すだけでもよく効きます。灸をする場合は「八分灸」でもいいでしょう。半米粒大の灸をすえて、完全に燃え尽きる手前で指を使い火を消してしまいます。こうすることで皮膚に灸痕を残さず、熱感だけを体に与えることができます。

腕が動かしにくい場合は、痛みをとる以外にも、他の筋肉の負担をとってやることで改善されることがあります。肺がんの手術では、胸筋が傷つくために腕が動かしにくくなりますが、腕は胸の筋肉だけで動かすのではありません。肩や背中の筋肉も使用するので、それぞれの患者さんの体をしっかりと診て、動きの悪い筋肉をゆるめて動かしやすくしていきます。

そのほか、手術後は腕がむくむことがあります。このような場合には、胸や腕に鍼を刺して、パルスをつないで通電するとむくみが改善されやすくなります。

手術の後には、さまざまな問題点が出てきますので、患者さんとしっかりと話し合いながら、治療していくことになります。これは抗がん剤などの薬物療法による副作用にしても同様で、そのときに困っている症状に対して治療を加えていきます。

まとめ

肺がんになるということは、呼吸機能が低下するということでもあります。これは手術をした後も同様で、弱ったからだと一生付き合っていくことになります。当然風邪などにかかると、健康な人以上に体へのダメージが大きくなるため、鍼灸治療を続けて体調を整えることが重要になります。



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