不眠症と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.10.11

不眠の人は多い

不眠に悩む人というのは多いもので、鍼灸院にも多くの方が来院されます。不眠の解消のために来られる方のほかにも、別の疾患で治療している患者さんに睡眠状態を確認すると不眠であることもあります。鍼灸治療は体の調子を整えて自然治癒力が最大限に発揮できるようにして病気を治療していくため、睡眠状態は必ず確認し、不眠があればそれに対する治療を行っていきます。そこで、今回は不眠に対して鍼灸治療でどのように治療していくのかを考えてみようと思います。

治療の前に

治療の前には不眠について詳しく話を聴いていきます。不眠症とはでも書いたように、不眠とはただ単に寝る時間が短いわけではありません。不眠には夜に寝床に入ってもなかなか寝つけない入眠障害や、夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒、朝早く起きてしまう早朝覚醒、ぐっすりと眠った感じがしない熟眠障害などがあります。

このように不眠にはタイプがありますが、なぜそのタイプの不眠が起こっているのかを知るため、さらによく話を聴くことになります。例えば、入眠障害の多くは、夜に寝床に入ってから悩みなどを考え込んでしまい眠れなくなりますが、悩む理由などは人それぞれです。家族のことや仕事のことなど、今の生活での苦労や今後のこと、ほかの病気についての不安など、人によって全く違います。そのため、鍼灸院で不眠の患者さんを治療する際、「不眠はこのツボで治す」と考えるよりも、その患者さんの不眠が起こっている背景を考え、体の症状以外のことにも対応していくことが大切になってきます。例を挙げれば、夫が病気になり、それが心配で夜眠れなくなった人には、夫の病気についてわかりやすく説明しアドバイスするなどして、心配を取り除くことが不眠の改善につながることになります。

このように、「不眠になった理由」の中でも生活環境などについては、体の治療という枠を超えて患者さんのためになるお手伝いやアドバイスをすることが一番大切になると思います。

また、その他で大切なアドバイスというのがあります。それは「睡眠時間」についてです。不眠の患者さんは「眠れていない」と訴えてきますが、なかには体が必要とする睡眠時間以上に眠ろうとしていることがあります。しかし、体は正直でそんなにたくさんは眠れずに起きてしまうために、本人は「眠れていない」と感じてしまうのです。分かりやすくいうと、人間は年をとるごとに睡眠時間が短くなるのが当たり前だということです。特に仕事を定年退職し、「今まで忙しく寝る時間がとれなかったので、これからは思いっきり寝よう」と考え、早い時間から布団に入っても寝ることはできません。このように、本人は眠れていないと思っていても、話をよく聴くと実は必要以上に眠ろうとしていることが原因であるとわかる場合があります。このようなときには、元の睡眠時間に戻してみるように説明することもあります。

薬物療法と一緒に行う

鍼灸治療でも不眠に対処することはできますが、早く治すには薬と合わせて治療を進めるのがいいこともあります。体にとっては少しでも眠れた方が楽になりますので、「鍼灸をしているから薬はのまない」というよりも、「合わせて治療してすぐによくする」と考えたほうがいいと思います。治療を続けていくと自然と眠れるようになってくるので、そうなってから薬の量などは調整していけばよいでしょう。また、薬はのむ時間を間違えている人が多い印象があります。薬はのめばすぐに眠たくなるわけではありません。眠たくなるまでには40分~1時間ほどかかりますので、寝る時間から逆算して薬を使うようにしましょう。

体の症状を改善する

さて、以上のように生活環境や睡眠時間の認識の違いなどをアドバイスするのと同時に、体の方も治療をしていきます。まずは、不眠症によく使うツボを紹介していきましょう。

まず、「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」が不眠に対して非常に効果的でよく使われています。失眠という名前は中国語で「不眠」と表されるくらいです。失眠には灸をするのがよいでしょう。このツボは熱くなるまで灸をするのが効果を出すためのコツになります。半米粒大の灸を熱く感じるまで何壮でもすえていきましょう。場合によっては50壮、100壮とすえることもあります。灸はなるべく継続して行うのがいいため、自宅でもするようにしましょう。せんねん灸をするのもいいと思います。最初は熱くなるまでたくさんすえる必要があったのが、継続してすえていると次第にすぐに熱さを感じるようになります。そうなれば夜ぐっすりと眠れるようになっているでしょう。

ほかには「膈兪(かくゆ:第7胸椎の外1.5cm)」もいいでしょう。第7胸椎といってもどこかわかりにくいので、もう少し簡単なツボのとり方を紹介しましょう。座った状態で背中の肩甲骨を触ります。肩甲骨はひし形になっており、その一番下の角を見つけましょう。左右の肩甲骨の一番下の部分を結んだ線と背骨が交わるところがおおよそ第7胸椎になりますので、そこから1.5cm横の部分が膈兪になります。このとり方でツボを探すときは座った姿勢でやることがポイントになります。うつ伏せなどでは腕の角度によって肩甲骨の位置が変わってしまい場所がずれてしまうからです。膈兪のあたりを押さえてこたえるところがあればそこに鍼や灸をしていきます。ここも続けてやるとよく眠れるようになってきます。

失眠や膈兪は不眠のツボ押してオーソドックスに使うことができます。そのほかにも体の症状に合わしていろいろなツボを使っていきます。

夜中に何度も起きてしまう人のなかには、トイレに行くために起きている場合があります。夜トイレに1回行くくらいならば問題ないのですが、何度も行くようになるとそれだけで気が滅入ってしまいます。夜何度も起きるのは血圧を高めてしまうことにもなるので、トイレに行かずに眠れるようにしていく必要があります。ツボは「照海(しょうかい:内くるぶしの下1cm)」や「次髎(じりょう:骨盤にあり正中線から外1cm)」がいいでしょう。これらは鍼を刺した状態で鍼の持ち手に灸を付けて燃やす「灸頭鍼(きゅうとうしん)」をするのがいいでしょう。トイレの回数を減らしてくれるので、夜起きる回数が減り眠りやすくなります。特に高齢者は「トイレに行くのを防ぐために寝る前に水を飲まない」という人もいますが、これは血液をドロドロにしてしまうので、これを防ぐためにもきちんと指導して治療することが大切になります。

ほかにもストレスに対しても治療していきます。ストレスがあるとイライラしてしまいますが、体にも変化が現れてきます。特にストレスの変化が出やすいのはおなかの肋骨の下です。ふつう肋骨の下は指が入っていくのですが、ストレスがたまると、ここが硬くなってしまいます。これは「胸脇苦満」といい、いわゆる「腹が立った」状態になります。これはストレスに対する体からのサインですので、ストレスを減らすのが肝心です。また、すでに体には変化が出ているので、これらの治療もしていきます。この肋骨の下には「期門(きもん)」というツボがありここに鍼や灸をすることがあります。そのほかにも「膻中(だんちゅう:胸骨の上、左右の乳頭の中央)」や「心兪(しんゆ:肩甲間部、第5胸椎の横1.5cm)」が効果的です。ストレスによる体へのダメージをとることで、夜眠りやすくなります。

そのほか、患者さんにあるさまざまな症状に対して適宜治療していきます。頭痛や肩こり、腰の痛みのほか便秘などいろいろな症状を治療することで、体全体をよくし体力をつけるようにしていきます。夜眠るというのは思っている以上に体力を使うもので、そのためにも全体を良くして眠れるようにしていく必要があります。

まとめ

このように不眠はさまざまな観点から患者さんをみて、治療を進めていきます。不眠になると体調を崩しほかの病気を悪化させ、ほかの病気が悪化することでさらに夜眠れなくなり不眠症がひどくなるという悪循環になってしまいます。そのため、早いうちから不眠を治療して、快適な生活を送れるようにしておくことが大切になります。



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