乳がんと鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.9.26

鍼灸治療では

乳がんについていろいろと勉強してきました。乳がんの治療は手術がメインとなり、さらに患者さんの状態に合わせて治療法を選択していきます。では、乳がんの患者さんに対して鍼灸治療で何ができるのか、鍼灸院に来院されたらどのように対応するのかを考えてみようと思います。

念には念を

当たり前ですが、鍼や灸をしたからといってがんが小さくなったり、消えてしまうことはありません。そのため、乳がん患者さんの治療では、必ず病院で治療を受けてもらい、それと併用する形で鍼灸治療をしていくことになります。

そこで、鍼灸師は乳がんが疑われる患者さんがいる場合は、積極的に病院を紹介することになります。乳がん患者さんの例では以前このような例がありました。胸のしこりが気になった女性の患者さんが、病院で検査を受け、乳腺炎と診断を受けました。病院で乳腺炎の治療を受けながら、鍼灸院でも治療をしていたのですが、経過はよくありません。そこで再度検査をしてみると、そのしこりは乳がんであったことが分かり、手術することになりました。このように、病院で検査を受けてもがんを見逃すこともあるため、少しでも疑わしいと感じた場合には、もう一度検査を受けるように勧めています。この例の女性は幸い手術もうまくいき、その後の経過もよく、今でも健康管理のために鍼灸治療を受けておられます。

手術の後に

さて、検査などによって乳がんが見つかったら、鍼灸治療をしている場合ではありません。まずは手術を行い、その後にホルモン療法や放射線療法を行っていきます。他にも化学療法などを行うこともあります。鍼灸治療も手術の後に行うことになるでしょう。

まず、第一に鍼灸治療には患者さんの体力を高める役割があります。患者さんはがんであるという事実によりショックを受け、手術によって体力を消耗し、乳房の変化などによって精神的にも落ち込みやすい状態にあります。しかし、手術の後は、放射線療法やホルモン療法、化学療法によって再発予防の治療を行うため、さらに多くの体力を必要とします。鍼灸治療では患者さんの話に耳を傾けながら、つらい思いや不安などを聴き、体の疲れが取れるように治療を進めていきます。鍼灸治療により、少しでもホッと一息ついて体を休めることができれば、それだけでも再発予防の助けになると思います。

副作用に対処する

また、薬物療法には副作用が出てしまい、人によってはその副作用によって生活の質(QOL)が低下してしまうこともあります。薬物療法によって現れる症状のなかには、鍼灸治療で対応できるものもあるので、それらの症状に対して治療していきます。少しでも副作用がマシになれば、生活の質(QOL)の低下も防ぐことができ、薬物療法自体を続けていきやすくなります。これも再発予防にとって大きなプラスになるでしょう。

ホルモン療法によって、「ほてり」や「イライラ」などの更年期障害に似た症状が現れた場合は、「百会(ひゃくえ:頭の頂点)」や「中封(ちゅうほう:内くるぶしの前1cm)」などのツボを使うのがよいでしょう。鍼も灸もよく効きます。「関節のこわばり」などの副作用の症状も鍼灸治療をするとよくなることがあります。鍼もいいですが、灸をするのがよいでしょう。こわばりのある関節に灸をすえるとマシになってきます。指先の関節などは熱さを感じやすいので、小さな灸をすえるようにします。自宅で続けて灸をする場合などはせんねん灸などを使うのもいいでしょう。

ほかに抗がん剤による副作用が強く出ることもあるので、これらも治療していきます。吐き気に対しては、「中脘(ちゅうかん:おへそとみぞおちの中間)」や「梁丘(りょうきゅう:膝の皿の外側から指4本分上のところ)」がよく効きます。吐き気が続くと食欲も低下してしまい、それによって食事の量が減ったりすると、さらに体力が低下してしまいます。ほかにも、便秘や下痢などがあると、体力が低下してしまいますので、治療していきます。

便の調子を整えるためには、「関元(かんげん:へその下3cm)」や「神門(しんもん:手首のしわの外側、手のひらと甲の境目)」などがいいでしょう。これも鍼をするのもいいですが、灸をした方が効果的です。灸はやはり毎日続けた方がいいので、せんねん灸などを使い自宅でやりましょう。

また、むくみなども鍼灸治療でよくなることが多いです。むくみとは体に水分がたまっている状態ですので、水分を排出させてくれるツボを使います。「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」などが効果的です。

そのほかにも、鍼灸治療には白血球を増やす働きがあります。鍼や灸といった方法で体に刺激を与え、それによって免疫力を高める効果があります。薬の副作用による白血球の減少などを抑えることができます。

このような副作用は一時的なもので、薬物治療が終われば数か月で元の状態に戻ります。病院では薬による副作用を抑えるための薬を処方しますが、鍼灸治療によって副作用がマシになれば、薬の量を減らすこともできますので患者さんの負担は少なくなると思います。

後遺症に対処する

乳がんの手術では、乳房を切り取ったことによる後遺症が現れることもあります。この後遺症というのはがんが再発しなくとも、日常生活に影響を与えますので、治療していきます。

乳がんができるわきの下のリンパ節に転移が起こりやすく、転移がある場合はこのリンパ節ごと乳房を切除します。すると腕のむくみなどの症状が現れます。このむくみには、胸部に鍼や灸をして残っているリンパ節の働きを良くしてリンパ液が流れやすくなるようにします。また、胸部だけでなく実際にむくんでいる腕の方にも鍼や灸をしてやるとさらに効果的です。鍼をして通電するのもいいでしょう。むくみがあると「重たい」と訴える患者さんがありますが、腕に鍼灸治療をすることによって、この重たさが軽減することも多いです。

そのほか、乳房を切除した際に大胸筋などにも傷がつき、腕や肩が動かしにくくなることもあります。なくなってしまった筋肉は鍼灸治療をしても元通りになることはありませんが、他の筋肉にアプローチすることで動かしにくさがマシになることもあります。棘上筋や棘下筋、大円筋などのほか、肩甲挙筋なども負担がかかっているので、負担をとってやることで動かしやすくなります。

これに関連して、手術の後は肩や背中がこってきたり、痛くなることも多いです。このようなこりや痛みは鍼灸治療ですぐによくなります。また、一度よくなっても繰り返しこりや痛みが出やすい時には、皮内鍼をするのもいいでしょう。皮内鍼とは、1~2mmの小さな鍼を皮膚に沿わして刺してテープで固定します。体の中に鍼が入ったり、取れなくなるようなことはなく、非常に安全な治療法で、鍼を体につけたままにしておけるので、効果も持続しやすいというメリットがあります。一度試してみるといいでしょう。

まとめ

このように鍼灸治療で乳がんを取り除いてしまうことはできませんが、困っている乳がん患者さんを手助けすることは可能です。患者さんによって病気の状態や現れる症状、治療による副作用などが違いますが、一人ひとりの話にしっかりと耳を傾け、話を聴きながら治療をすることで、心も体もラクになれるようにしていきます。



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