高血圧と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.9.14

鍼灸治療では

高血圧の患者さんは日本に約4000万人、高血圧予備軍は約1500万人いるといわれています。いわゆる「国民病」ともいえる病気で、当然鍼灸院に治療を受けに来られる患者さんにも、高血圧の人がたくさんおられます。そこで、今回は高血圧の患者さんを鍼灸治療ではどのように診ていくのかを考えてみようと思います。

高血圧の治療の目的

まず、最初に高血圧の治療の目的とは何かをはっきりとさせておく必要があるでしょう。目的とは、血圧を下げることではありません。高血圧治療の本来の目的は、高血圧によって引き起こされる脳卒中や狭心症、心筋梗塞、糖尿病などの病気を予防して、長生きできるようにすることにあります。これは鍼灸治療の「未病治」の考え方に共通するものがあります。

未病治というのは、まだ完全に病気にはなっていない状態で治療をしていく考え方で、あらかじめ予防するというのとはまた少し違います。例えば体の具合が悪くなり病院に行っても、検査で異常が発見できず満足な治療が受けられないことがあります。ですが、しばらくすると病気が進み、そこでようやく検査で異常が見つけられるようになります。鍼灸治療ではまだ検査で異常が出ないような早期の段階から治療を開始するので、病気になってから治療するよりも早くよくなるようにしていきます。

血圧が上がる意味

高血圧は血圧が上がってしまい、体にダメージを与えますが、反対に体が高い血圧を欲しているから上がった状態になっているともいえます。人間の体を畑、心臓をポンプ、血管をホースに例えると、人間の体(畑)は、ポンプを押してホースで水をまかないと枯れてしまいます。もし、ホースが固くボロボロになったり詰まってしまうと(動脈硬化)、水の通りが悪くなるため、ポンプがいつもよりも水を送り出し、ホース内の水圧(血圧)が上がってしまいます。しかし、水圧が上がったからといって畑に水をやるのをやめるわけにはいかないのです。これが常に血圧が高いという高血圧の状態なのです。

よく、血圧が上がったから頭が痛いとか目が充血するなどという人がいますが、これは勘違いです。血圧が上がって症状がでることはありません。先ほどの例えを使えば、ホースの中の水圧が上がっても、水は畑(体)に送られているので問題はないということになります。しかし逆に、畑がカラカラに乾いていたりするといつも以上に水が必要になり、その分ホース内の水圧も上がってしまいます。つまり、体に悪いところや症状などがあると血圧は上がってしまいます。これが体が高い血圧を欲している状態というわけです。

そのため、治療では体のさまざまな症状をとり、なるべく血管に負担をかけないようにしていくのが基本となります。

治療は薬物治療と合わせて行う

このように鍼灸治療では体の症状を改善し、血管の負担を減らして、合併症を防いでいくのですが、やはり薬物治療と併用して行う方がいいでしょう。特に収縮期血圧が200mmHgを超えているような人は、鍼灸治療でじっくり血圧を下げるよりも、すぐに薬を使い血圧を下げる必要があります。

また、血圧が薬を使っても下がらない、鍼灸治療をしても下がらないという非常に頑固な高血圧も両方を合わせて使うと下がることもあります。当然血圧を下げるには生活習慣の改善が前提になりますので、そちらも合わせて行う必要があります。

鍼灸治療の実際

では、鍼灸治療でどのように治療をしていくか具体的に考えていきましょう。基本は先ほども書いたようにそのときある症状をしっかりとって、体を楽な状態に保つのが大切です。また、それとは別に高血圧の患者さんによく使うツボなども考えてみましょう。

血圧などの血管の働きは主に自律神経が調節しています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が働くと血圧は上がり、副交感神経が働くと血圧が下がります。そのため高血圧の治療では優位になっている自律神経を鎮め、副交感神経を活発に働くようにしていきます。この自律神経に効果のあるツボは「中封(ちゅうほう:内くるぶしの前1cm)」や「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」などがあります。ここは鍼も灸もよく効きます。自宅で朝晩にせんねん灸をするのもいいでしょう。続けていくと血圧も安定してくるでしょう。

ほかには「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」に灸をするのもいいと思います。ここには米粒の半分くらいの大きさの灸を熱さを感じるまで行いましょう。このツボには利尿作用があり、尿が出やすくなることで体内の水分量が減り、その分血液量も減って血圧が下がる効果を期待できます。これは利尿薬と同じような作用ですが、利尿薬は尿が出すぎて脱水になってしまうことがあります。体から必要以上に水分が出てしまうためになるのですが、失眠のツボでは脱水になることはありません。失眠に灸すると体内に水分が多い人はよく尿が出るのですが、そうでない人は尿の出はあまり変わらないためで、非常に安全な治療法といえます。このツボも毎日行うのがいいでしょう。

また、高血圧は塩分の取りすぎが原因でなってしまうこともありますが、同じ量の塩分をとっていても高血圧になる人とならない人がいます。これには「食塩感受性」というものが関係してきます。食塩感受性が高い人とは簡単に言うと食塩に反応して血圧が上がりやすい人のことです。これには体質などの遺伝的なものもあるとされますが、生活習慣も大きく関係してきます。食塩感受性に関係のある生活習慣とは「肥満、睡眠、ストレス」です。これらの生活習慣に問題があると血圧が上がりやすくなってしまうので、これらも治療して治していきます。

肥満についての鍼灸治療は以前書いたのでそちらを参考にしてください。睡眠障害には先ほども出てきた「失眠」の灸が効果があります。これも毎日続けていると、よく眠れるようになってきます。ほかには「天柱(てんちゅう:首の後ろで髪の生え際)」も効果的です。ここに鍼をしてゆるめるとよく眠れるようになります。また、睡眠障害には睡眠時無呼吸症候群が関係していることがあります。これはよくいびきをかく人などが要注意です。この睡眠時無呼吸症候群は肥満も原因の1つとして考えられています。両方合わせて治療していきましょう。

ストレスについては、生きている限り必ず何かしらのストレスを受けるため無くしてしまうというのは不可能です。何か気分転換やリラックスできる自分に合った方法持つようにするのがいいでしょう。また、ストレスの感じ方は体調によっても変わってきます。例えば頭痛があるときは、近くで大きな声を出されるとストレスとして感じてしまいます。このように普段なら気にならないことでも、体調が悪い時にはストレスと感じやすくなるので、鍼灸治療によって体の調子を整えストレスを感じにくくなるようにしていきます。肩こりが治ったら血圧も下がったという人などもいるくらいです。どんな些細な症状でも治療して治していくのが高血圧を改善するきっかけになります。

まとめ

鍼灸治療の最大の特徴は、病気を治すのではなく体の悪い患者さんを治すということにあります。そのため、高血圧はこのツボを使えば治るという発想ではなく、患者さんの訴える症状をきちんととることによって体の調子を整え、それによって高血圧も治していこうと考えます。それには患者さんが自分の体と向き合い、今自分の体がどのような状態か、どんな症状があるかを考える必要もあります。生活習慣の改善とともに患者さんと鍼灸師が二人三脚で治療を行うのが高血圧を改善する成功の秘訣になるでしょう。



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