食道がんと鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.9.5

鍼灸治療では

今回は、食道がんの患者さんを鍼灸院でどのように対応し、治療していくのか考えてみようと思います。といっても、体に鍼や灸をすればたちどころにがんが消えてしまうということはあり得ません。食道がんの場合でも同じで、現代医学での手術や放射線療法、化学療法などががん治療のメインになり、鍼灸治療では患者さんを支える役割をすることが大切になってきます。

体力をつける

がん患者さんを治療するうえで、一番重要なのは、患者さんの体力をいかにつけるかということです。食道がんの患者さんは、多くは50~70歳代です。早期発見できれば、体への負担の少ない内視鏡的切除術で完治を目指せますが、外科手術や放射線療法、化学療法などでは、体への負担が大きく、その分体力を使うことになります。また、外科手術をすべきところでも体力がなければ、ほかの治療法に変えなくてはいけないこともあるでしょう。鍼灸治療を行うことによって体力をつけてやることができれば、良い状態で手術などを行うことができます。

また、手術後の再発予防にも体力をつけることが大切になります。体力をつけ、体の免疫力を高めることによって、がんに対する抵抗力をつけ再発を防ぎます。もし、再発したときも鍼灸治療を継続して行っていれば、再び手術を行うときに体力が残っている状態ですので、手術の成功率も上がると思います。

症状を軽減する

体力をつけるためにはがんによる症状を軽減する必要があります。特にがんによる痛みがあると、肉体的にも精神的にもまいってしまい、通常よりも体力を消耗してしまいます。食道がんは、がんが食道の外側に広がって気管や肺に及んでくると、背中や胸の奥などが痛んできます。痛みのきついところなどに鍼や灸をすると、一時的ですが痛みを和らげることもできます。がんの緩和ケアで使う鎮痛薬や医療用麻薬などと合わせて行うことにより、少しでも痛みを軽減できれば、体力の消耗を抑えることができます。

ほかにもがんの症状として、「飲んだり食べたりしたときにしみる」「のどに違和感がある」「のどがつかえる」などがあります。このような症状があると食事を食べるのもしんどくなってしまいます。そして食事の量が減ってしまうと体力が落ちてしまいます。点滴をするよりも自分の口から食べ物を食べたほうが体にとってはいいので、鍼灸治療をして少しでも食べることができるようになれば、体力をつけることができます。ツボは、「人迎(じんげい:のどぼとけの外1.5cm)」や「天突(てんとつ:胸骨の上)」などがいいでしょう。

消化吸収の働きをよくする

また、それと並行して、消化吸収の働きを高めてやることも大切です。消化吸収の働きがよければ、同じ量を食べても体に取り込む栄養の量が変わってきます。食べたものを効率的に体に取り込むことは、体力をつけるうえでも重要です。これには「中脘(ちゅうかん:おへそとみぞおちの中間)」や「足三里(あしさんり:膝の下3cm、向う脛の外1.5cm)」などのツボが効果的です。

便通を整える

そして、物を食べるためにはしっかりと出さなくてはなりません。便が出ていない状態では、食事も食べられなくなり、消化吸収の働きも落ちてしまいます。そのため、便秘の治療などもしていきます。また、反対に下痢になると体力が大きく落ちてしまうので、これも治療しなくてはなりません。ツボは「次髎(じりょう:骨盤の上、正中線の外1.5cm)」が便の働きをうまく調整してくれます。便秘にも下痢にもよく効きます。

ぐっすり眠る

ほかにも体力をつけるためには、しっかりとした睡眠をとる必要があります。夜眠れるためには、先ほども出てきた痛みのコントロールがかかわってきます。痛みというと体を動かしたときに出る痛みを想像しがちですが、がんの痛みは「安静時痛」といってじっとしていても痛みます。夜中布団のなかで横になっていても痛く、その痛みによって眠ることができずに不眠になってしまうこともあります。やはり、上手に痛みをコントロールしてしっかりとした睡眠をとれるようにすることが大切です。また、痛み以外で不眠が続いていても体力が落ちてしまうので、それに合わせた治療をしていきます。不眠のツボでは「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」などがよく効きます。ここは米粒の半分くらいの大きさのお灸を、熱くなるまですえることによって不眠を改善することができます。

主にこのような治療を継続していきますが、手術後などの再発予防の治療では、そのときある症状をこまめに改善していくことも大切です。その時によって風邪や頭痛、肩こり、腰痛などを治療していくことで体を良い状態に保っていきます。

心のケア

がん治療の際、入院中などは担当医や看護師といった専門家が近くにいて、周囲にも同じ病気を抱えた患者さんがいます。しかし、退院して日常生活に戻ると、急に1人になったような不安を感じることがあります。

また、がんの手術では、体の一部の機能や形状を喪失することも少なくありません。こうした喪失に伴う悲しみや、日常生活の困難などに対する不安から、抑うつ状態になる人が良くみられます。これを「精神的後遺症」といいます。

鍼灸治療は、一般的に時間をかけて治療いていきます。治療中には患者さんの体について話すこともありますし、このような不安な気持ちについても話を聴くことができます。私などは、だいたい1時間前後治療時間をかけてしっかりと話を聴くように心がけていますが、不安感の強い患者さんなどには、この「話を聴く」ことそのものが治療の役目を担っていると感じています。このように鍼灸治療では日々の体の状態をこまめに改善すると同時に、心のケアにも力を入れています。

まとめ

このように鍼灸治療では日々の体調を整えて、体力をつけることを目指して治療していきます。そして当然ですが、手術後は禁煙など日常生活の習慣を改善していく必要があります。飲酒は適量ならばOKですが、やはり飲みすぎてはいけません。普段からがんのリスク管理を行いながら、鍼灸治療によって体力をつけていくことが大切です。



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