前立腺肥大症と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.8.19

尿トラブルを改善する

これまで前立腺に起きる病気として、前立腺肥大症前立腺がんについて勉強してきました。今回はこれらの病気に対して、鍼灸治療ではどのように治療していくのかを考えていこうと思います。

鍼灸院に来院される患者層は一般的に高齢者が多く、前立腺の症状として、尿トラブルを訴える人もおられます。このとき、まず考えなければならないのは、前立腺がんではないかどうかでしょう。基本的に前立腺がんは、初期では排尿障害が起こりにくいとされ、排尿障害が現れていれば進行した状態です。何気なく「最近尿が出にくい」などといわれたときは、確認のためにも一度泌尿器科への受診を勧めることになります。もし前立腺にがんや肥大があれば、病院での治療と合わせて鍼灸治療をしていくことになります。

鍼灸治療では

さて、それでは前立腺肥大症などに対する鍼灸治療について考えていきましょう。

前立腺肥大症はいまだに原因不明の病気です。肥大が大きければ症状も強いのかというとそうでもありません。そのために前立腺肥大症では尿のトラブルを改善して、生活の質(QOL)を上げることが重要になります。

尿のトラブルは「頻尿」や「夜間頻尿」「尿意切迫感」など出すぎて困る症状と、「尿が途切れる」「尿が出にくい」「残尿感」などの出なくて困る症状があります。これらの症状に対して、鍼や灸で治療するのですが、使用するツボはどちらの症状でも同じようなところを選びます。なぜ同じようなツボでも「出すぎるのを止める」効果と、「出ないのを出す」効果があるのでしょうか。分かりやすく例えると、ツボというのは水道の蛇口のようなものなのです。水道から水が出すぎている、あるいはなかなか出ないとき、鍼や灸という外部からの刺激によって、うまく蛇口を調整すれば適切な量の水を出せるようになります。

しかし、これにも限界はあります。前立腺肥大症は症状によって、第1~3期へと進行していきます。第3期は慢性尿閉になり、自分ではほとんど尿を出せない状態になっています。また尿がダラダラと漏れ出る溢流性尿失禁が起こることもあります。このような状態になると、鍼灸治療ではなかなか改善するのが難しくなってしまいます。そのため、なるべく早い段階で治療することが大切になってきます。

全身のツボを使う

では、頻尿や残尿感、尿が出にくいといった、尿のトラブルに関して、どのようなツボが効果が高いのか考えていきましょう。

まず、最初はおなかのツボを使ってみるのがいいでしょう。おなかにあるツボでは、「関元(かんげん:おへその下2cm)」や「中極(ちゅうきょく:恥骨結合の上)」などをよく使います。これらのツボは、場所にこだわるのではなく、下腹部を押さえて膀胱や尿道に響くポイントを見つけて、鍼や灸をするのがいいと思います。鍼や灸したときにもジワーと膀胱のほうに響いたり、熱さが染み渡るような感じがあるほうが効果が上がりやすいです。また、おなか自体冷やさないほうがいいので、日常生活でも気を付けるように注意してもらいます。夏の暑い時期でも、布団をはねのけて腹が出て冷えてしまうこともあるので、腹巻などを使うのもいいかもしれません。

同じように、泌尿器に効果を与えやすいツボが、腰のほうにあります。「次髎(じりょう:骨盤にある出っ張りの下1cm)」が特に効果があります。このツボもおなかの中にやさしく響くように鍼をするのがいいでしょう。また、温めるのもいいので、鍼を刺して鍼の持つ部分(鍼柄)にもぐさを付けて燃やす「灸頭鍼(きゅうとうしん)」がよく効きます。灸頭鍼は体に立てた鍼の先にもぐさがあるため、灸の痕をつけずに体の芯を温めることができます。

そのほかには、足のツボを使うこともあります。下腿の内側で、膝と足首の中間で骨の後ろ側にある「地機(ちき)」などがいいでしょう。鍼もいいですが、灸をすることも多いです。灸は、上質で軟らかいもぐさを米粒の半分くらいの大きさにひねって、線香で点火していきます。健康な人であれば、3壮(灸は1回すえるのを1壮と数えます)もすえれば熱いと感じるのですが、尿のトラブルなどがあるとなかなか熱さを感じないことがあります。この場合は熱さを感じるまで何壮でも灸をすえていきます。人によっては50壮、100壮とすえることもありますし、それ以上やることもあります。この灸は、続けていくと頻尿や尿が出にくいといった症状が改善してきて、よくなってくると次第に少ない壮数で熱さを感じるように変わってきます。注意が必要なのは、熱くないからといって灸の大きさを大きくしないことです。最初は米粒の半分くらいの大きさだったのが、気づいたら米粒や小豆大にどんどん大きくなってしまいますが、これでは灸の痕が大きく残ってしまいます。大きさは半米粒大に統一して、ツボからずれないように、上に上にとすえていくことが大切です。

ほかには、夜間頻尿の症状があり、夜に何度もトイレに起きて睡眠不足という人には「百会(ひゃくえ:頭の頂上)」を使うことがあります。百会は夜間頻尿にも効きますし、睡眠不足によるイライラもとってくれます。

まとめ

これらのツボは、患者さんの体の反応を診て、その人に合ったツボを使い治療していきます。尿のトラブルというのは、本当に大きなストレスになり、生活の質を下げてしまいます。鍼灸治療では普段から患者さんの症状をこまめに聞いて治療するので、尿トラブルがあればすぐに伝えるようにしましょう。



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