すい臓疾患と鍼灸治療養生灸のススメ

category : 鍼灸治療 2011.7.29

鍼灸治療で快適な生活を

さて、すい臓の病気についていろいろと勉強してきました。急性膵炎、慢性膵炎、すい臓がんなど、どの病気になっても生活に大きな支障が出てしまいます。そこで鍼灸治療なのですが、残念ながらどんな名人の鍼灸師であっても、組織が破壊されてすい臓の機能が低下してしまうと元に戻すことはできません。それではすい臓の病気を持つ患者さんは鍼灸治療を受けても無意味かというと、そうではありません。患者さんはさまざまな症状によって、苦しんでいるため、それらの症状をとり、生活の質(QOL)を上げるのに鍼灸治療は大きな助けになります。

鍼灸治療の前に

まず、最初に鍼灸治療をする前に考えておかないといけないことがあります。それは、命にかかわる病気であれば病院を受診させる必要があるということです。例えば、激しい腹痛を訴えている場合、急性膵炎の可能性があるのならば、すぐに救急車を手配して病院に送らなければなりません。また、腹痛や背中の痛みが長い期間ずっと続いている、あるいは鍼灸治療をしていても治りが悪い場合は、すい臓がんの可能性もあります。気になる症状や所見があれば病院に検査を依頼する必要があるでしょう。

そして、すい臓の機能が低下している患者さんは、何よりも食事療法が大切になります。鍼灸院や病院でどんな治療を受けていても、食事に注意しておかなければすい臓は悪くなる一方です。進行を抑えるためにも、どのような食事をしているのか把握して、アドバイスを行うことが大切になります。

鍼灸治療の実際

それではいよいよ鍼灸治療について考えていきましょう。はじめに書いた通り、すい臓の病気の患者さんを治療する際、すい臓機能の低下を元に戻そうとしても、戻ることはありません。そこで、治療目的は患者さんの生活の質(QOL)を高めることになります。少々すい臓の機能が低下していても、日常生活に支障なければ快適に過ごせるものです。

生活の質(QOL)をよくするには、食後の腹痛を抑えるのが重要になります。すい臓の機能が低下していると、アルコールを飲んだり、油の多い食事をすると、腹痛が起こります。患者さんはおなかの痛みに耐えながら、「もうアルコール(油もの)はやめよう」と思います。しかし、毎日節制して生活していても、ある日無性に飲みたい(食べたい)と思うことがあるのです。そして、「ほんの少しだけ」と思い飲んで(食べて)しまうとまた腹痛に苦しめられることになるのです。

鍼灸治療を普段から行っていると、この腹痛がマシだったり、なかったりすることがあります。いつもならてんぷらを食べると腹痛に苦しんでいる患者さんが、定期的に鍼灸治療を受けているとてんぷらを食べてしまっても腹痛が楽で助かったということもあります。このように鍼灸治療は続けていると患者さんにとって大きな助けになります。しかし、最近治療を受けておらず、てんぷらを食べてしまって出てきた腹痛をその時になって治療しても効果は出にくいです。日々の体のメンテナンスが重要ということです。

鍼灸治療の考え方

よく現代医学は人間の体を機械ととらえて治療していると表現されます。どういうことかというと、『病気になった時には悪くなった部品(内臓・骨・筋肉など)を修理すれば病気は治る』という考え方です。すい臓の病気であれば、すい臓を治療すれば治るという考え方のことです。現代医学はこれによって、今まで治すことのできなかったさまざまな病気を治すことができるようになってきました。しかし、部品の治し方がまだわからない病気に関しては、治療するのが苦手という面があります。

それに対して、鍼灸治療は人間を1人の病人としてとらえて治療しています。考え方としては、どんな病気でも体全体のバランスが崩れた状態になっているのでそのバランスを整えることで治療しようとします。すい臓の病気でいえば、すい臓を治すのではなくまだ残っている臓器(胃・肝臓・胆のう・循環器など)がしっかりと働いて、すい臓の分までカバーできるようにしてやろうと治療していきます。そのため、すい臓(病気)そのものを治せなくとも患者さん(病人)を治療することはできるのです。しかし、鍼灸治療はじっくりと時間をかけて治療せざるを得ないので、薬を使ったほうが早く、楽に治るケースもあります。

実際の治療ではどちらの考え方がいいかというのではなく、どちらも使うのがいい思います。

それでは、鍼灸治療ではすい臓の病気を持つ患者さんをどのように診ていくか考えてみましょう。

まず、すい臓に異常があると腹部に反応が出やすいです。おなかの肋骨の下(季肋部)はよく硬くなっています。すい臓は体の左側にありますが、実際の患者さんでは左右両方が硬くなっているので左右とも治療していきます。右側には肝・胆に関係するツボ(期門)があり、消化の働きを助けてくれます。そのほかに消化を助けてくれるツボで、中脘(ちゅうかん:みぞおちとおへその中間)があります。腹部は毎回治療するときに触診を行い、その時の反応が出ているツボを選んで使っていくことで、消化吸収の働きを助け、高めていくことができます。

ほかによく出る反応として、背中の痛みに伴って、背中から腰がこってくるようです。このこりを鍼や灸してほぐしてやると、痛みが落ち着いてきます。また、腰や背中が痛いと普段の姿勢が崩れて、首のこりやひざの痛みなどが出てくることがあります。これらの症状があれば、治療を加えることによってQOLを上げることが可能になります。

まとめ

このように、鍼灸治療では日頃から、その時出ている症状をきめ細かく治療していくことで体全体を整え、それによってすい臓の負担も減らしていきます。何度も繰り返しになりますが、すい臓が元に戻ることはないので、 一生病気と付き合っていく必要があります。1番大切な食事療法をはじめとし、現代医学と鍼灸治療を上手に組み合わせて、生活の質(QOL)を高めていきましょう。



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