部分入れ歯について養生灸のススメ
歯は重要!
私の父親などもよく言いますが、「歯だけは今から大切にしなさい」とアドバイスを受けます。これは父が実際に入れ歯になり、そこから出てきた本心でしょう。歯は毎日必ずする食事に欠かせないもので、非常に重要な働きをしていますので、なくなってしまうとその影響が大きいのです。そこで入れ歯などを入れる治療を行います。入れ歯にも種類があり、メリット・デメリットがあるので、今回は部分入れ歯について勉強していこうと思います。
歯の役割
成人の歯は全部で28~32本あります。一般に、歯には次のような役割があります。
・摂食
唇や舌とともに、食べ物を口の中に取り込みます。
・咀嚼
口の中の食べ物をかみ砕き、舌や頬、あごとともに、食べ物を唾液と混ぜ合わせ、のみ込みやすい形にまとめます。
・嚥下
食べ物をのみ込みます。
「食べる」ことに大きな役割を果たす歯は、全身の健康や運動能力などにも関係し、体のさまざまなバランスを保つのに重要な役割を果たしているといわれています。また、発音や表情などにも関係しています。
歯を失ったまま放置すると、そこに隣の歯が傾いて寄ってきたり、噛みあわせの相手の歯が伸びてきたりします。残った歯が動いて、歯と歯の間のすき間が広がると、汚れがたまりやすくなり、虫歯や歯周病が悪化しやすくなります。
また、食べ物を噛むときに、残った歯に大きな負荷がかかるようになります。特に奥歯を失うと、噛みあわせが悪くなって、あごの関節の周囲が障害される「顎関節症」を招く心配もあります。
入れ歯の種類
歯を失う原因には、虫歯や歯周病、事故や手術などがあります。「入れ歯」は、失った歯を補う装置で、咀嚼をはじめとする食べる機能を回復するとともに、言葉を発音しやすくしたり、外見を整えたりする働きがあります。また、大切な働きの一つに残った歯を守ることもあります。
入れ歯は、大きく2つに分けられます。
・総入れ歯
上下の歯がすべてなくなった場合に使われる入れ歯です。
・部分入れ歯
部分的に歯が失われた場合に使われる入れ歯です。1~2本の歯を補うものや、多くの歯を補うものなど、さまざまな形のものがあります。
部分入れ歯とは
●構造
健康保険が適用される一般的な「部分入れ歯」は、主に、人口の歯である「人工歯(じんこうし)」、それを支えるための「義歯床(ぎししょう)」(あるいは「床」)、「クラスプ(入れ歯を固定する金属製のばねのような装置)」などからなります。入れ歯を入れる位置によっては、左右の入れ歯を連結するために「バー」や床でつなぐ場合もあります。
●人工歯
人工歯の主な素材は、比較的柔らかい「レジン」、硬い「セラミック」、両者の中間くらいの硬さの「硬質レジン」などがあります。いずれも健康保険が適用されます。
・レジン
患者さんに合わせて加工がしやすい反面、食べ物をうまく噛み切れなかったり、変色や摩耗が比較的起こりやすいといえます。
・セラミック
食べ物をよく噛み切ることができます。レジンに比べると、変色が少なく、摩耗が起きにくいのですが、加工しにくく、長年使用するとひび割れることがあります。
・硬質レジン
硬さ、変色や摩耗の程度、加工のしやすさは、いずれもレジンとセラミックの中間くらいです。
どの素材を選ぶかは、患者さんの希望のほか、残った歯の状態によっても異なります。
●義歯床
人口の歯を埋め込む土台となるもので、歯肉を覆って密着させます。歯肉によく似た色のレジンでできています。
●クラスプとバー
入れ歯は、金属でできたクラスプを、残った自分の歯にかけて、固定します。
しっかりと入れ歯を固定するために、クラスプをかける自分の歯を少し削ることがあります。そこにクラスプの一部をかけるようにすると、入れ歯が沈みにくく、安定します。また、入れ歯と接する歯の面を平らに削ると、自分の歯と入れ歯の歯の密着度が増して、入れ歯がより安定します。
クラスプを前歯にかける場合、笑ったりしたときにクラスプが見えてしまうこともありますが、クラスプの長さや角度を調節することで目立たなくすることもできます。ただし、歯の形や生えている向きなどによっては、調節が難しいこともあります。
左右の歯が失われた場合には、左右の入れ歯を金属でできたバーでつないで一体化させます。また、片方の奥歯を失った場合は、入れ歯の奥の端をクラスプで固定することができません。そのため、金属のバーでつないだクラスプを反対側の歯にかけて固定します。
バーには、棒状のものと板状のものがあります。
棒状のバーには健康保険が適用されます。患者さんによっては、「違和感を感じる」「バーと歯の間に汚れがたまりやすい」「変形しやすい」といった難点もあります。
板状のバーには、健康保険が適用されません。患者さんのあごの形などに合わせて作られるため、「違和感が少ない」「汚れがたまりにくい」「変形しにくい」とされます。
●入れ歯の使い方
入れ歯を初めて使うときには、多少違和感を伴うこともありますが、使ううちに徐々に慣れてきます。慣れるまではどうしても、噛みやすい自分の歯だけで噛みがちですが、少しずつ人工歯でも噛むようにして、入れ歯になれるようにしましょう。
また、入れ歯は、クラスプを所定の歯にかけ、しっかりと装着してから使うようにしてください。中途半端に装着した状態で堅いものを噛んだりすると、クラスプが変形して、修理できなくなることもあります。外すときも、クラスプに指をかけて静かに外すなど、日頃から入れ歯を丁寧に取り扱うことが大切です。
まとめ
入れ歯は人類が最初につくった「人工臓器」ともいわれています。それほど多くの人が歯を失って困ってきたことの証拠でもあり、またそれに対応してきた歴史でもあります。
入れ歯はつくって入れたらそれでいいというわけではありません。きちんと調整して、元の歯と同じように快適に使えるようにしておくことが大切です。