良性発作性頭位めまい症とは養生灸のススメ
生活習慣に関係するめまい
めまいには生命に危険のある脳の病気によって起こるものや、耳の病気によって起こるものがあります。耳の病気で起こるめまいには、メニエール病や突発性難聴のように、めまいとともに耳鳴りや難聴が起こるものもありますが、耳鳴りや難聴が現れないものもあります。今回はその中の1つである「良性発作性頭位めまい症」について、勉強していこうと思います。
良性発作性頭位めまい症は、めまいを起こす病気のなかでは最も多くみられるものです。これまでは、原因がはっきりとしなかったのですが、最近では、発症に生活習慣が深く関わっていることがわかってきました。
良性発作性頭位めまい症では、頭を動かしたときに「回転性めまい」が起こるという特徴があります。めまいは激しいことが多いのですが、軽い場合もあります。持続時間は数秒から2分間程度と比較的短く、同じ姿勢をとるたびに繰り返しめまいが起こります。まれに「吐き気」を伴いますが、耳鳴りや難聴は起こりません。
どのように起こるのか
良性発作性頭位めまい症は、内耳の「三半規管」の異常によって起こります。三半規管のなかにはリンパ液で満たされ、「耳石器」から剥がれ落ちた「耳石」や、三半規管内で代謝された老廃物など、多くの異物が浮遊していると考えられます。通常は頭を動かすと、これらの異物はリンパ液の流れに乗って「卵形嚢(耳石器の一部)」に移動し、卵形嚢内の細胞で処理されます。こうして、リンパ液はきれいな状態に保たれています。
しかし、頭をあまり動かさない生活をしていると、異物が次第に増えて、三半規管の中にたまってしまいます。たまった異物は頭を動かしたときに移動して、リンパ液の流れを乱して体の回転などを感知する部分を刺激します。その刺激が異常な信号となって、左右の耳からの信号のバランスが取れなくなり、めまいが起こるのです。
生活習慣に気を付ける
これまで、良性発作性頭位めまい症は中高年の女性に多いとされてきました。しかし、最近では若い人や子ども、男性にも増えてきています。
この病気で起こるめまいは、生活習慣と深く関係しています。例えば、「同じ姿勢をとり続けることが多い」「休日は寝ていることが多い」「運動をあまりしない」ような人は、日常生活であまり頭を動かすことがありません。そのため、良性発作性頭位めまい症が起こる可能性が高くなります。
逆に頭をよく動かす生活は、めまいの予防につながります。パソコンで作業をするときは、途中で休憩をとって軽く運動したり、適度な運動を日々の習慣にするなど、頭を良く動かす生活を送りましょう。予防のために行う運動は、ウォーキングやゴルフのような頭をあまり動かさない運動よりも、ラジオ体操など、全身を動かす運動がおすすめです。
治療法
●良性発作性頭位めまい症の検査
まず患者さんの病状を詳しく知るための「問診」を行い、その後「平衡機能検査」が行われます。
平衡機能検査では、メニエール病の生地でも紹介した「フレンツェル眼鏡」をかけて、医師が患者さんの頭を動かしながら「眼振」をチェックします。最近では眼振の現れ方で、三半規管のどの部分に異物があるかが判断できるようになっています。
●良性発作性頭位めまい症の治療
めまいを軽減する「薬物療法」と、めまいの原因となる異物を排出する治療があります。
・抗めまい薬…めまいを根本的に治すことはできませんが、症状を軽くする目的で使用します。
・浮遊耳石置換法…医師が患者さんの眼振を観察しながら頭を動かして、三半規管の中にある異物を耳石器へと排出する治療法です。三半規管のうち、主に「後半規管」に異物がある場合に行われます。頭の動かし方は異物がたまっている位置によって異なります。
1回の治療で異物が排出されることもありますが、排出されない場合は繰り返し行います。また、頭を動かすことによって、多くの場合、治療中にめまいが起こります。
・運動療法…三半規管から異物を排出しやすくするために自宅で行うのが運動療法です。体全体を使って頭を動かすと、回転の刺激が三半規管に伝わってリンパ液の流れが促され、三半規管の中の異物が排出されやすくなります。運動中はめまいが起こることが多いですが、通常、運動を続けるうちに軽減していきます。
ただし、他の病気でめまいが起こっている場合は、この運動を行ってはいけません。運動を行う前に、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。
まとめ
「良性発作性頭位めまい症」と聞くと、長い名称のためか、非常に難しい病気のように感じてしまう人もいます。しかし、この病気は生活習慣を改善すればきちんと予防することもできますので、あまり不安になる必要はありません。まずは病気のことを知って、日々の生活に運動を取り入れるようにしましょう。特に毎日テレビを見たり、ゲームをする時間が長い人は注意しましょう。